日本では英語の能力を証明する資格として、TOEICが重視されている。
翻訳業や外資系の企業では、求人に応募するのにTOEIC800点以上は最低条件、あるいは900点以上を求められることもある。
しかし、ADHD、ASDやLSDなど発達障害の症状を持つ人にとっては、TOEICは点数を取りづらい試験だという声も聞く。
実際、過去数回受験してみて、TOEIC(L&R)はリスニング・リーディングの両方とも、英語力以外の要因に左右されやすい試験だと感じた。
そんな中、つい最近TOEICを運営するIIBC(国際ビジネスコミュニケーション協会)が、身体や精神・発達障害を持つ人を対象に「プライオリティサポート」を提供していることを知ったので、直近の試験でさっそく利用してみた。
TOEIC試験で利用できるプライオリティサポートとは
英検やTOEICその他の各種試験で、従来では主に視覚障害や聴覚障害、上肢・下肢の障害を持つ人に対して、筆談や点字受験といった合理的配慮がされてきた。
さらに、最近では精神障害や発達障害を持つ人でも、事前に事情を伝えて配慮を受けることができるようになった。
SNSで検索してみたところ、発達障害とTOEICの関係についての投稿がちらほら見つかった。
安定のadhdによりTOEICのリスニングまたマークミス?むしろマークミスしなかったことがない?解答欄まだあるのに何故か隣の欄からマークしはじめてた?途中で気づいてよかった?塗り絵はしなかったけどパート5は結構わからなくて自分にがっかり。前より落ちてませんように?とりあえず終わってよかった
— Neco Nucco ?英語??語学習中☕️ (@komachisuke) January 12, 2020
TOEICってうちみたいなタイプの発達障害の天敵みたいなテストだよな〜
マークだからワーキングメモリと作業速度遅いのモロに出るし、記述ないから言語知識でカバーすることもできないし、時間カツカツだからちょっと追いつけなくなるとパニクるし— 美少女@ 煌めきは希望か? (@neko_bumi) March 10, 2018
発達障害には、「聴覚過敏」「注意散漫・不注意」「特定の物事への強いこだわり」などの特性が挙げられているので、それが試験の成績に影響する可能性がある。
例えば、TOEICではリスニング音声は一回しか流れないので、注意散漫や集中力を維持できないと、音声を聞き逃して回答できなくなってしまう。
聴覚過敏があると、他の受験者の物音や雑音でリスニングに集中できなくなってしまうということもある。
リーディングパートの場合、時間配分がうまくできないと、最後の方の問題を解けないまま終わってしまう。
つまり、一つの問題へのこだわりが強すぎたり、注意散漫になりやすい人は時間のロスが大きくなる。
これらの不利な点を、プライオリティサポートを利用することで軽減させられるかもしれない。
TOEICの公式ページには、具体的に発達障害に対する配慮の内容は書かれていないが、「その他のサポート」の欄にあるリスニング・リーディング時間の延長は、医師の診断書があれば認められる。
TOEIC申し込みからプライオリティサポート適用、受験までの流れ
なお、このページでいうTOEICとは、リスニング・リーディングセクションのことを指している。
ライティング・スピーキングセクションの場合、どのような配慮を受けられるかわからない。
申し込みから受験までは、以下の流れで行われる。
TOEIC公式ページから受験を申し込む
通常の申し込みと同じく、まずはTOEICのウェブサイトから受験したい日程のテストを申し込む。
その際に、「プライオリティサポートを利用する(初めて/前回と同じ/前回と異なる)」を選択する。
また、時間の延長を希望する場合は、必ず午前の試験に申し込む。
抽選結果と案内のメールが届く
コロナ禍のため、現在TOEICは抽選方式で受験者数を制限している。
ただし2021年以降はどの会場も当選確率はほぼ100%となっているので、通常テストを受ける分にはほぼ問題なさそうだ。
プライオリティサポートを利用する場合、別室で受験することになるかもしれないので、万が一部屋が用意できない場合は当選しない可能性もある。
とはいえ、こちらも利用する人はそこまで多くないはずなので、落選の心配は少なそうだ。
電話・メールでサポート内容を伝える
抽選結果の通知メールが届いて当選した場合、プライオリティサポート利用者には、別途で案内のメールが届く。
そのメールを受信してから3~4日以内に、①希望するサポート、②提出可能な書類(障害者手帳のコピー、診断書等)を電話またはメールに返信して伝える。
特に時間延長を希望する場合には、診断書の提出を求められる可能性が高く、提出期日が決められているので、早めに連絡した方が良い。
直近のテストでこのプライオリティサポートを利用したときには、電話のやり取りを3、4回繰り返して、自分の症状や必要な配慮、配慮が必要な理由等を電話で説明した。
また、この電話連絡をしてから約2週間以内に診断書を提出しなければならず、主治医の診察を受けられる日がなかなかなかったので、「事前に主治医に連絡を取って診断書を書いてもらえることを確約できること」を条件に提出期限を少し遅らせてもらった。
因みに、この電話のやり取りでは、注意散漫や多動がありリスニング音声に集中できないこと、一つの文章や問題へのこだわりが強すぎてリーディング問題を先に進められなくなってしまうことなどを伝え、①リスニング音声を2回繰り返してほしいこと、②リーディングの時間を2倍にしてほしいことの2点をお願いした。
結局、①は通らず、②の時間延長のみが認められた。
リーディングは試験時間が2倍、リスニングは音声が流れたあとの回答の間が2倍になった。
必要書類を郵送する
電話/メール連絡でサポートが認められた場合、下記の書類を期日までに郵送する。
- プライオリティサポート依頼書(TOEICウェブサイトからダウンロード)
- 診断書(病院に用紙がない場合、TOEICの事務局からメールで用紙を送ってもらえる)
- 障害者手帳のコピー
人によっては1の依頼書の提出だけで良い。
試験時間の延長を希望する場合は、診断書に①延長時間を1.5倍と2倍のどちらにするか、②時間延長が必要な理由、③延長倍率1.5倍、2倍の選択理由、④その他必要な配慮(あれば)を医師に記入してもらう。
受験の案内メールと受験票が届く
送付した書類が認められると、試験日の2週間くらい前に確認のメールが届く。
必要な配慮をするために別室が用意される場合は、会場が変更になることもあるので、その旨がメールに記載されている。
また、一般受験のときと同様、受験票が自宅に届く。
テスト会場にて受験
試験当日は、指定の会場に向かい、受験票を確認して指定の部屋で受験する。
時間延長を希望した場合は、一般受験者とはリスニングもリーディングも時間が違うので、個室で単独もしくは他の時間延長希望者と一緒に受験することになる。
以降、実際にTOEIC試験を受けたときの状況と結果については、下記の実践編に続く。
コメントをどうぞ