心理学の卒業論文は大変?卒論の構成から本文の書き方までわかる完全版

 

心理学の論文は、目次、表題(タイトル)、問題(研究史)、目的、方法、結果、考察、引用文献で構成されていることは、下記の記事にて説明した。

 

 

今回は、それぞれの書き方について詳しく述べていく。

 

目次

目次は基本的に、本文をすべて書き終わったあとで、最後に作れば良い。

以下は通信制大学の卒業研究で実際に作成したもの(本文に関わる部分は消してある)。

 

 

 

表題(タイトル、テーマ)

以下はこれまでに使われたことのある表題の例

  • 大学生の先延ばしに対するアクセプタンス&コミットメント・セラピーの効果の検討
  • 高校生の英語学習における学習動機と学習方略
  • 幼児期における思いやりによる嘘と心の理論獲得の関連
  • 情動性の涙がストレス緩和に及ぼす影響
  • 恐怖条件づけの忘却におけるD-サイクロセリンの効果

 

「〇〇と□□の関連」、「〇〇が△△に及ぼす影響」「〇〇における□□の検討」というような表題が使われていることが多い。

 

  • ある程度抽象的な表現にする。
  • 表題を読めばどのような研究かわかるような内容にする。

 

また、表題のうしろに副題をつけることもある。

副題は、表題を補足する形で少しだけ具体的にするが、実験方法や分析の詳細までは書かない。

以下は副題の例。

  • 大学生の友人に対する深い自己開示を促進する要因の検討:友人の親しさ・主観的類似度・好意度に着目して
  • リーダー特性によるリーダーシップ行動の影響力:PM理論によるリーダー特性分類から

 

 

問題(研究史)

ここでは、研究で扱うテーマについて先行研究を参照しながら整理して、問題点を挙げて本研究の目的へとつなげていく。

そのとき、以下のような点を踏まえて記述していく。

 

  • 先行研究を通して現在までにわかっていること、足りていないこと
  • まだ明らかになっておらず、調べなければならないこと
  • なぜその研究をする必要があるのか
  • 研究をすることで、自分たちの生活や世の中にどんな利益につながるのか

 

実際の論文を例にとってみると、以下のような構成になっている。

今日の大学生の病理現象については、“ 青年期のモラトリアム的延長” に原因を帰す文化的、社会的議論が多い。(略)…

それを裏付ける傾向として、(略)…といった相談が、学生相談所において増えてきていることが挙げられる。

Steinberg(1987)も、青年の不安の場合には、青年自身が内的体験を言語で十分に表現できないし、(略)…という問題点を指摘している。

したがって、大学生が学生生活において感じている不安の種類および水準を適切かつ迅速に診断できる心理検査を開発することができれば、臨床場面において不安に対する大学生自身の気づきにもつながるし、(略)…にも役立つものと思われる。

現在一般に用いられる不安検査は、(略)…などが存在するが、必ずしも大学生の不安水準の測定を目的として作成されたものではない。したがって、これらの尺度では、大学生の日常生活における不安を測定することはできない。

また学校不適応を起こしているものは、(略)…といわれている。たとえばOllendick & Mayer (1984)は、(略)…という気持ちが強いことを明らかにしている。

これらのことから、大学生の日常生活における不安水準を詳細に分析することができれば、(略)…を未然に防ぐことも可能になると思われる。

 

引用元:大学生活不安尺度の作成 および信頼 性 ・妥当性の検討(藤井、1998)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy1926/68/6/68_6_441/_pdf

 

①主題、問題
②問題
③先行研究の参照
④問題点からの見解と意義
⑤現在までの問題点
⑥関連する問題と先行研究の参照
⑦問題点からの見解と意義

 

このように、先行研究の概要(研究史)から始まって、具体的な文献名を引用(引用するときは(著者, 年)のように書く)しながら問題を明確化し、自身の見解や不明点を織り交ぜつつ、課題に取り組むことで得られる利益について書くという流れになっている。

※論文の読み方、大意をつかむコツについては、後日別記事で公開予定

 

 

目的

上記の論文の続きで、問題点を受けて具体的に研究で達成したい目的を述べる。

 

そこで本研究では、大学内のみならず広く大学生活全般における不安の測定を目的とする”大学生活不安尺度”を開発し、その信頼性と妥当性を検討することにした。

 

引用元:大学生活不安尺度の作成 および信頼 性 ・妥当性の検討(藤井、1998)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy1926/68/6/68_6_441/_pdf

 

また、ここで「仮説1:不安と抑うつには正の相関がある」「仮説2:不安と積極性には正の相関がある」のように仮説を記載しても良い。

なお、問題と目的の部分は、「問題・目的」のように一緒にして書くこともある。

 

目的は、問題点との矛盾がないよう、整合性のとれる内容にする。

 

 

方法

方法は、実際におこなった調査や文献研究のやり方を記述する。

 

  • 論文を読むだけで、他の人が同じ実験や調査を再現できるように具体的に書く
  • 文章は「〇〇を行った」「〇〇人だった」のように過去形にする

 

  1. 対象者
  2. 時期
  3. 材料
  4. 手続き
  5. 倫理的配慮

 

対象者

個人が特定できない程度に、必要な情報を書く。

例:首都圏の大学生200人(男性100名、女性100名)に質問紙調査を実施した。年齢は18歳から25歳までとし、その他の年齢の者は分析対象から除外した。

 

 

時期

調査や実験を行った時期について書く。

例:2021年8月下旬から9月上旬にかけて実施した。

 

 

材料

調査に使用した質問紙、実験に使用した器具などを記載する。

複数の材料がある場合は、箇条書きにして書いて説明しても良い。

 

例:
1)日本語版UCLA孤独感尺度(第3版)

Russel,Peplau & Ferguson(1978)により作成されたThe UCLA Loneliness Scaleの改訂第3版(Russell, 1996)を,舛田ら(2012)が邦訳した,孤独感を測定する尺度である。「決してない」から「常にある」までの4件法で,9つの逆転項目を含む20項目で構成される。得点が高いほど孤独感が高いことを示す。

 

 

手続き

他の人が同じ調査や実験を再現できるように、実際に行った手順を具体的に記述する。

例:複数の大学教員の協力のもと,大学の学部生から調査協力者を募り,インターネット上で無記名調査を実施した。調査にはGoogleフォームを利用し、年齢、性別と各尺度の質問項目への回答を求めた。回答所要時間は約15分であった。

 

 

倫理的配慮

協力者への倫理的配慮の記述は、最近では必須になりつつある。

例えば以下のような項目について記述する。

  • 参加者のプライバシーの保護(データの管理方法、論文への記述方法、文書の保管期間等)
  • 健康被害のリスクへの配慮(実験の安全性、万一の場合の対応方法など)
  • 参加・不参加の自由、途中で辞めることの自由
  • 協力しないことで不利益が生じることはない(成績や単位修得に影響しない)
  • 参加者への説明(調査・実験方法の説明や同意文書により同意を得たことの記述)

 

 

 

 

結果

実験や調査によって得られた結果を過不足なく記述する。

 

  • どのような分析方法を使って、どのような結果が得られたのか記述する。
  • 図表を作成し、参照しながら文章で説明する。
  • 個人的な感想や意見を含めず、客観的な事実だけを伝える。
  • 文章は過去形にする。

 

 

引用元:大学生活不安尺度の作成 および信頼 性 ・妥当性の検討(藤井、1998)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy1926/68/6/68_6_441/_pdf

 

例えば上の表の場合、以下の項目が盛り込まれている。

  • 学年
  • 性別
  • 被験者数
  • 各質問紙尺度の平均値と標準偏差
  • 合計得点
  • 性別、年齢の違いとその両方によって生じた結果の差

 

次に上記の内容について、表を参照しながら文章で説明する。

例:
〇〇の結果をTable3に示した。日常生活不安と評価不安の間には学年差が見られた(日常生活不安:F[3,2775)]=2.99, p < 0.05;  評価不安:F[3,2775]=5.00, p < 0.01)。

 

 

上記は、質問紙調査をして得点を数量化して分析したときの書き方だが、実験や観察をして少人数の対象者の事例を報告するときには、数量化できないこともある。

事例研究をするときには、対象者の発言や様子を具体的に記述したり、時系列順に変化の様子を記述したりする。

 

 

考察

考察は基本的に、以下の1~3の流れで記述していけば良い。

1.研究目的の再掲

2.結果の要約と考察

3.本研究の課題と今後の展望

 

 

研究目的の再掲

目的の項で書いた内容を過去形で簡潔に記述する。

例:本研究では、大学内のみならず広く大学生活全般における不安の測定を目的とする”大学生活 不安尺度”を開発し、その信頼性と妥当性を検討することにした。

 

 

結果の要約と考察

結果のうち重要な部分を簡潔に記述し、そのあとでそれぞれの結果に対して考察を加える。

このとき、自分の直感や一般論で語らず、先行研究やデータにもとづいて客観的な見方で考察する

また、事前に仮説を立てた場合、仮説と結果が一致していたかどうか、異なっていた場合はなぜ異なっていたのか推察するのも良い。

 

以下は例文。

①日常生活不安と評価不安の間には、学年差が見られたため、多重比較を行った。その結果、3年生以上が1年生に比べて有意に高かった。

②これは、〇〇(1990)が実施した□□の結果とも一致している。〇〇は、大学1年生は△△により日常生活の不安要因が増えやすい時期だと述べている。

③つまり、本研究においても、◇◇の不安が減少する3年生以上に比べて、△△の影響を受けやすい1年生の方が日常生活不安の得点が高くなったと考えられる。

④したがって、仮説1は支持された。

 

①結果の概要
②先行研究による裏づけ
③先行研究をもとにした考察
④仮説が支持されたか否か

 

 

本研究の課題と今後の展望

本研究の足りなかった部分や改善すべき点、「今後こうすれば、こういうことに役立てられるかもしれない」といった今後の期待を書く。

例:
先行研究(〇〇・□□, 1999)では、250名の協力者に質問紙調査を実施していることを考慮すると、本研究の100名では正確なデータを得るには不十分であったかもしれない。対象者を増やして、再度検討する必要がある。今後は、△△について面接法を用いて、◇◇の詳細を把握することで、〇〇と□□の関連性を検討することが期待される。

 

  • 結果を再度書くだけにならないようにする
  • 一般論や思い込みにとらわれず、根拠を示しながら論理的に考察する
  • 目的の振り返り部分は過去形にする

 

 

謝辞

卒論の指導教員や研究協力者に向けて感謝の意を伝える。

本文とは直接関係のない部分なので、ネット上に公開されている論文の謝辞の部分を手本に、同じように書けば良い。

せいぜい5~6行くらいの短い文章でも問題ない。

 

 

引用文献

引用文献の書き方は、組織によってさまざまで、統一されていない。

また、書籍、インターネット、論文など引用元の種類によっても書き方が異なる。

大学や指導教員によって指定されている場合は、その形式にしたがって書く。

詳しくは、日本心理学会がネット上に公開している「執筆・投稿の手びき」のページが参考になる。

 

  • 論文中に引用した文献は、すべて掲載する。
  • 参考文献は記載しない。

 

 

この記事のまとめとおすすめ参考書

卒論を書くにあたって、まず先行研究の論文をたくさん読む必要がある。

また、質問紙調査をする場合には、ある程度の統計の知識が必要になってくる。

そこで、卒論を書く前に、まず卒論の読み方や統計の種類、分析方法について学んでおいた方が良い。

以下は大学教員から読むように薦められた、論文を書くための情報が簡潔で網羅的に書かれた本なので、この記事に書いた情報だけでは足りない人におすすめしたい。