不注意優勢で処理速度が遅い発達障害者が人生ハードモードな理由

直線道路

 

発達障害の話題は最近多くなってきているが、発達障害にも色々なタイプの人がおり、社会への適応のしやすさも人によってかなり変わってくる。

中には発達障害の診断を受けず、配慮がなくても仕事をこなせている人もいるだろう。

一方で、就労移行支援や障害者雇用などを活用しても、なかなか仕事に就くことができず、就職しても職場に適応できず辞めてしまう人もいる。

発達障害という括りはとても大雑把なもので、うつ病と統合失調症がまったく別の病気なように、発達障害者と一括りにしても現れる症状には個人差がある。

それは知能検査の結果からもいえる。

成人の発達障害の検査として有名な、「ウェクスラー式知能検査(WAIS)」は世界的に評価が高く、最新のWAIS-Ⅳでは、全検査IQ(FSIQ)と、言語理解(VCI)、知覚推理(PRI)、ワーキングメモリー(WMI)、処理速度(PSI)の4つの指標を測定することができる。

この検査で、複数の指標では平均を上回る高IQなのに、一つの指標だけ極端に数値が低いという結果が出る人もいれば、すべての指標において平均を大きく下回る人もいる。

両者は同じ発達障害者として診断されるかもしれないが、社会や環境への適応には大きな差が表れることも予想できる。

複数の指標において高い数値があれば、得意な部分を活かして苦手な部分を補うこともできる。

しかし、すべての指標において数値が低く、不得意な部分が複数あるためにそれらが影響し合い、さらに困難が生じるということも考えらえるのだ。

もちろん、複数の指標において数値が高いがゆえに、低い部分との落差に悩むこともあるだろうし、そもそも知能検査の数値がそのまま現実生活の困難度に反映されるとは限らない。

だから誰かと誰かを比べることには意味がないが、一方で「発達障害」という診断名だけで一律に人を判断すべきではないし、定義にだけ基づいて当事者を見るのは適切ではないともいえる。

「テレビは一部の成功者の事例ばかり取り上げている」という批判が起こっているように、社会への適応度には発達障害者の中でも格差がある。

その中でも、「不注意が多い」「処理速度が遅い」という二つの欠点を持っている人には、職業遂行上かなりのハードルが立ちふさがってくるだろう。

その理由については、以下のとおり。

 

発達障害と注意欠陥

割れた皿

ADHDは注意欠陥・多動症などと訳されるが、ADHDが有名になったのはまず、学校内で落ち着きがなく、授業中に動き回る生徒が問題になったのが事の発端だった。

そのため、目に見える多動の部分がクローズアップされ、注意欠陥に関してはほぼスルーされてきた。

注意欠陥(不注意)というのは、どんなに気をつけていても必ず起こるもので、努力やリラックスや意識だけでは直せない。

その原因についても未だ解明されておらず、特例子会社などでは、ダブルチェックをしてミスを防ぐくらいしか有効な対策は実施されていない。

ましてや一般の厳しい職場では、ミスをすれば叱責を受けることは免れず、謝罪のためお客さんの家に訪問しに行った知人もいた。

発達障害の他の症状との関連では、日中の眠気の強さや多動の症状が不注意につながっているという見方もできなくはない。

つまり、強い眠気に晒されている状態ではミスは起こりやすくなるし、多動の症状により頭の中で色々な考えが巡っている状態では、目の前の作業に集中できないため不注意も発生しやすい。

上記は個人的な予想ではあるが、今後の研究に期待したい。

 

発達障害と処理速度

減速表示

WAISにある4つの指標のうちの一つである処理速度は、あまり取り上げられる機会はないが、仕事をしていく上で最も大きな問題の一つであるといえる。

仕事が遅い人はどんな職場でも疎まれるし、特にチームで作業をするような場面では目立ってしまう。

しかも、処理速度は上げることが難しいし、対策も立てづらい。

「日頃から意識的に速く動くことを心がけるようにすれば、速くなる」という意見を聞いたことがあるが、はたして発達障害にも当てはまるのかどうか。

また、処理速度の遅さも他の発達障害の症状と影響し合って起こっていると予想できる。

例えば、注意欠陥の傾向がある人は、ミスをなくすために慎重に行動したり、何度も確認してミスを防ごうとする。

そのために時間がかかってしまい、処理速度の低下につながる。

かといって、処理速度を速くしようとすればミスが増えるかもしれないというジレンマに陥ってしまう。

よく、「ミスをするくらいなら時間をかけてでも正確にやった方がいい」という人がいるが、実際には速さと正確さはどちらも必要なもので、どちらが欠けてもいけない。

これまでの多くの研究によると、処理速度が遅い人の割合は、発達障害者全体から見てもかなり多いようだ。

 

不注意優勢型で処理速度が遅い発達障害者が生きていくために

悩んだポーズの男性

処理速度と不注意が多い発達障害者が、社会に適応していくのが困難なことは、これまでの話で想像がついたかと思う。

では、そのような当事者たちに考えられる選択肢はどのようなものがあるだろうか。

 

不得意が目立ちにくい仕事を選ぶ

一番無難に考えられるのは職場選び。

障害者枠の一部の求人や、特例子会社などでは求められる仕事の量が少なく、自分のペースでできる職場もあるにはある。

また、処理速度があまり影響しない職種もあるだろう。

自分のこれまでやってきた仕事では、塾講師などは生徒に問題を出して、終わるのを待っている時間が長いので、処理速度があまり関係しなかった。

あとは、作業よりも人の話を聞くのがメインな職種など。

 

会社に寄らない働き方

最近、発達障害に起業やフリーランスは向いているか?という議論をちらほら見かける。

起業している人には発達障害の傾向を持つ人が多いと言われることがあるが、自分で仕事をすれば会社のルールに縛られず、自分に合った働き方がしやすいかもしれない。

ただし、起業している人には発達障害の傾向を持つ人が多い=発達障害には起業が向いている、というわけではない点に注意。

やはり人によって向き不向きはあるだろう。

 

福祉に頼って生活する

会社に適応できず、不眠や鬱を発症する人は少なくない。

よく、「働かないと生活できない」と言う人がいるが、病気になるくらいなら生活保護なり年金なり、国の福祉制度を利用した方が良い。

国の世話になりたくないというプライドや世間体を気にする人もいるが、仮に職場に適応できずに会社にとってデメリットになるのなら、結局国の代わりに会社のお世話になることになる。

結局形は違えど、人は皆何かしらの世話にならないと生きていけない。

 

今のところ、処理速度や注意欠陥の有効な治療方法はない以上、該当する当事者は上記のような選択肢を考えていくほかないだろう。