【体験談】処理速度が低い発達障害の原因・対策と適職を徹底検証

 

発達障害の人の中には、処理速度が低いことで「仕事が遅い」「課題を終わらせることができない」などの悩みをもつ人が少なくない。

しかも、処理速度を上げたり対策がしづらいと言われている。

その上で、問題解決のためにできる行動が二つある。

一つは、原因を探ることで処理速度の低さを改善すること。

もう一つは、処理速度が低くてもできる仕事や環境を探すこと。

本記事では、主にその二つについて体験談をとおして解説する。

 

WAIS知能検査と処理速度

発達障害の話題で使われる「処理速度」とは、単純作業をするときのスピードのことを指していて、ウェクスラー式知能検査(WAIS)で測定することができる(児童の場合はWISC)。

 

WAIS-Ⅳの測定内容

(指標得点)

言語理解(VCI)
ワーキングメモリー(WMI)
知覚推理(PRI)
処理速度(PSI)

 

WAIS-Ⅳの処理速度の検査内容
符合指示に従う力、事務処理の速度と正確さ、
動作の機敏さ、視覚的短期記憶
記号探し視覚的探索の速さ
絵の抹消視覚的探索の速さ

 

この検査は平均が100で、ほとんどの人は+-15(85~115)の範囲に収まるので、85を下回ると平均より低いことになる。

また、それぞれの指標得点が他の指標得点にも影響するという点も見逃せない。

例えば、ワーキングメモリーや知覚推理が低いと、処理速度にも影響する可能性がある。

逆にいうと、他の指標得点の低さをカバーできれば、処理速度の問題が改善することも考えられる。

 

処理速度が低い発達障害の原因

仕事や作業が遅いのには、単純に生まれつきの問題だけでなく、さまざまな要因が考えられる。

例えば、以下のようなものがある。

 

不注意・ケアレスミスに起因した問題

ADHD(注意欠如・多動症)の場合、どれだけ気をつけていても凡ミスをしてしまうことがある。

ミスが多いと「よく確認しろ」「焦らず慌てずにやるように」と叱責を受けてしまうため、慎重に何度も確認する癖がつき、その結果として作業スピードが落ちてしまう。

 

集中力の低さ

ADHDで多動の傾向があると、目の前の作業に集中できなくなる可能性がある。

また、ASD(自閉症スペクトラム)で細部へのこだわりや興味の偏りなどがある場合、適当に早く仕事を片付けることができず、退屈で単調な作業に集中力を持続できなくなるかもしれない。

 

強迫性障害が併発しているケース

ASDと強迫性障害には重なる部分があり、併発している人もいる。

強迫性障害の症状としては、「書かれている文字を一語一句読まないと気が済まない」「何度も確認する」などの行動があるため、多くの時間を消費してしまう。

 

記憶力の低さ

前述したように、ワーキングメモリーが低いと、指示された内容が思い出せず、行動するまでに時間がかかってしまう。

また、仕事では作業手順を思い出したりメモを見返しながら作業することになるので、遅くなってしまう。

 

社会性・他人への関心の薄さ

他人への関心が薄い、他人の反応を予測できないなどの特徴がある場合、急いで作業しようという意識が薄れてマイペースになってしまったり、目の前の仕事への集中力を欠いてしまうことが考えられる。

 

疲労を感じやすい

発達障害で、疲れを感じやすいという人は少なくない。

疲労した状態だと、一定の速度で作業を続けることができなくなる。

仕事開始時と1時間後、週の初めと週末で著しく作業スピードが違う場合は、特に当てはまるかもしれない。

 

情報処理の問題

複数の情報が同時に入ってきたり、目で見た判断して処理するのが苦手などの傾向があると、反応が遅れるので結果的に作業時間も長くなる。

これは、WAISの検査結果からもある程度推測できるだろう。

 

睡眠障害の影響

疲れやすさとともに、発達障害で日中の眠気を訴える人の割合はかなり多い。

眠気が強い状態だと本来の力を発揮できず、作業能率も悪くなってしまう。

 

不安・抑うつなどの精神的な要因

発達障害の二次障害として、不安障害やうつ病を併発している人もいるが、不安が強いと目の前の作業に集中できなかったり、自信がもてず確認回数が増える場合がある。

うつ病や抑うつも、脳の働きを鈍らせパフォーマンスの低下につながる。

 

処理速度の低さを改善する方法・対策

前述した原因を踏まえて、どのように問題を解消・軽減していけば良いか?

考えられる手段を列挙してみる。

 

  • タイマーを使って時間内に作業が終わるように意識し、集中力を持続させる。
  • あらかじめ細かいスケジュールを立てて、時間の見積もりや予測力の弱さを補う。
  • コンサータなどの治療薬を使用して、不注意・多動・眠気などを抑える。
  • 興味を持てて集中できる仕事に就く。
  • 一度終わったあとで再チェックすることにして、一回目は速く終わらせることで確認行為にかける時間を減らす。

 

処理速度の低さは生まれつきのものなのか、それとも成長していく過程でそうなったのかというのも、重要なポイントといえる。

もし後者の場合、きっかけとなった出来事から原因を探って、改善の糸口がつかめるかもしれない。

 

処理速度が低い発達障害の適職とは?

ここからは個人的な就労経験をとおして、適応できた職業は〇、適していないと感じた職業は✕、どちらともいえないものは△の3段階で評価してみた。

 

  1. コンビニ ✕
  2. 警備員 〇
  3. 一般事務 ✕
  4. プール監視員 〇
  5. 倉庫内ピッキング作業 ✕
  6. ポスティング △
  7. イベント案内係 〇
  8. ウェブサイト制作 〇
  9. 個別指導塾講師 △
  10. 介護施設職員 ✕
  11. ネット監視 〇
  12. ファストフード店 ✕

 

コンビニや飲食店はマルチタスクやスピーディな接客が求められるので、処理速度がかなり影響した。

ピッキング作業は不注意が少なくて時間を管理する能力があればできるかもしれない。

警備や案内業務などは、立ち仕事でじっとしている時間が長く、処理速度があまり関係ない内容だったので〇。

塾講師は、同時に教える生徒の人数や、その日の時間割によって余裕がある時とない時に差がある。

 

最後にネット監視の仕事は、決まった時間内に決まった量の仕事をこなさないといけないので、一定以上の処理速度が求められる。

ただし、接客や倉庫作業と違うのは、相手にするのがパソコンの画面という狭く限られた範囲なので、思いのほか集中力を持続できた。

 

まとめ

WAISをはじめ、知能検査をすれば自分の処理速度を点数で知ることができる。

しかし、数値が低く出たとしても、その背景にはさまざまな原因が隠されていることもある。

例えば、ある職場で仕事をするスピードが遅くてうまくいかなくても、一人でリラックスできる環境なら一定のスピードを維持できるということもあり得る。

今回のテーマである「処理速度が低い人の適職」に絞ってまとめると、①原因を探って今の職場で対策を立てる、②原因に合わせて職場を変える、③処理速度が関係しない仕事を選ぶ、などの選択肢が考えられそうだ。

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