場面緘黙・発達障害は遺伝するのか?

人の脳

 

場面緘黙や発達障害と親からの遺伝の関連性はこれまで何度となく議論されてきた。

「発達障害 遺伝」「場面緘黙 遺伝」などで検索すると当事者・経験者の記事や投稿が表示され、多くの人が関心を持っているのがわかる。

そこで、今回は病気・障害と遺伝の関連性について自分なりに考察してみて、その結論から思うことをまとめてみた。

 

発達障害と遺伝

 

 

 

 

上記はツイッターのツイートだが、発達障害がテレビや書籍で取り上げられ始めてきた10数年前から遺伝との因果関係は指摘されてきた。

これまでの研究でも主な原因は「遺伝」で、次いで「環境要因」が挙げられている。

参考:発達障害は遺伝ですか?(株式会社kaienのウェブページより)

 

ネットでも、発達障害者の親が同じく発達障害を持つ子供の育児に悩む投稿や、自分の親も発達障害傾向があるという当事者の投稿が見かけように、遺伝が関係していることは確かだろう。

自身が発達障害で日常生活や仕事上に支障をきたしているのであれば、子供を産む前に遺伝の可能性は考慮しておかないといけない。

 

ただし、「発達障害と診断されたから自分は発達障害だし、子供も発達障害に生まれる」というのは当たっていない部分もある。

そもそも発達障害の診断基準自体が曖昧で、医師によっては初診で検査もせずにいきなり発達障害と診断を下すようなことまである。

また、うつ病などで自己肯定感が低い人の中には、社交的でないことや会話が苦手であったり片付けるのが苦手なことを過剰に気にしすぎてしまい、学校生活や仕事がこなせていても「自分は発達障害に違いない」と早急に決めつけてしまう人がいる。

金儲けが目的だったり知識がない医師は、こういう本来は障害がないのに、過剰に気にして病院を訪れた患者がネットや本から得た知識で自分に当てはまる症状を語りだすと、簡単に発達障害と診断してしまうかもしれない。

発達障害と診断されていても、自分の持ち味を活かして恵まれた環境の中で能力を発揮して、仕事や普段の生活でも問題なく過ごせているパターンだってある。

だから医師からの診断よりも、自分が発達障害の症状でどんな部分でどれだけ支障をきたしているか、を考慮しないといけない。

 

場面緘黙と遺伝

ツイッターで検索してみると、場面緘黙と遺伝についての投稿や「親も緘黙だった」というツイートが散見される。

 

 

 

 

自分自身も親から「子供の頃場面緘黙だった」という話を聞いたことがあったので、場面緘黙の親を持つ当事者・経験者は一定数いるらしいけれど、今のところ遺伝との関連性は医学的に証明されていない。

 

では、なぜ場面緘黙だった親を持つ当事者・経験者が一定数いるのか?

2018年に出版された「イラストでわかる場面緘黙サポートガイド」(合同出版)には、場面緘黙当事者の中には発達障害・社会不安障害等を併発している人もいることが指摘されている。

場面緘黙・発達障害・社会不安障害はそれぞれ異なるものだけど、個人的には発達障害や社会不安障害を持つ人は場面緘黙になりやすい要素も持ち合わせていると思う。

 

まず発達障害は自閉症スペクトラム(ASD)、ADHD、LD等に分類されるけれど、このASDの中でも「孤立型」「受身型」「積極奇異型」などと分類されることがある。

この中でも「受身型」のタイプの傾向として「思っていることを言葉にしづらい」「自分から積極的に自己主張しない」「話がうまくかみ合わない」などがあり、積極的に他者と関わらなかったり関わり方がわからないのと、相手から話しかけられてもやりとりが上手くいかず、孤立や会話に対する苦手意識が強化されてしまう。これが場面緘黙の要因になり得る。

 

注意しなければならないのは、「発達障害者全体が場面緘黙になりやすい」のではなく「発達障害の一部のタイプの人は場面緘黙を誘発する条件をつくりやすい」というのが正確であって、発達障害すべてに当てはまるわけではないということ。

実際、自助グループなどでもADHDや自閉症スペクトラムの積極・奇異型の人が集まると会話が止まらないことがあり、自閉症スペクトラムの受身型の人が集まると静かになりやすく、同じ発達障害の集まりでも雰囲気は異なる。

 

 

次に社会不安障害(社交不安障害)との関連性について。

社会不安障害の症状として挙げられるのは「人前でスピーチ・発言するとき」「人前でご飯を食べるとき」「人前で文字を書くとき」などに不安を感じやすい。

また、他人から注目されることに不安を感じ、動悸や震えなどの身体症状を引き起こすこともある。

社会不安障害と場面緘黙には共通項が数多く存在していて、声が出せなくなったり学校のトイレを使えなくなるのが他人から注目されることに起因しているとすると、大半の場面緘黙当事者が社会不安障害と診断されてもおかしくない気がする。

 

つまり発達障害・社会不安障害などの症状の一部は場面緘黙を引き起こす要素になり得るし、親がそれらの障害を持っていると子供に遺伝して、最終的に場面緘黙に繋がる可能性は無きにしも非ず。

病名や障害などを抜きにして考えても、親の「人前で不安になりやすい」「内向的」などの性格が子供に遺伝することはあるので、直接的な原因ではないにしても多少なりとも影響することは考えられる。

 

遺伝に付随して起こる問題

親から子供に障害が遺伝するかどうかという議論は、その後の二つの議論にも発展する。

 

  • 自分の親に対しての感情
  • 自分は子供を産んでいいのか

 

特に発達障害は親からの遺伝が主な要因とされていて、一生治らないものとされている。

例えば現在30代~40代で成人してから発達障害の診断を受けた世代からすると、学生時代や社会人になっても周囲から理解されず、いじめや職場での叱責などの対象とされてきた人もいる。

ひと昔前まで発達障害という言葉自体知られておらず、ましてや親の世代では誰も診断など受けないので親が発達障害かどうかは知る由もなく、親も子供が発達障害の診断を受けたあとも無頓着だったりする。

自分の親が子供の目から見て明らかに発達障害の傾向があると、これまで苦難の日々を送ってきた当事者としては「自分の親が発達障害でなければよかったのに」という思いをどこかで持つのも無理はなく、親のことを好きになれなかったり複雑な感情を抱くこともあるだろう。

ましてや自分の親の偏った価値観を押し付けられたり、周囲と同じように行動できないことで親からも心ない言葉を浴びせられたり、不適切な育てられ方をしたりすると、親に対する恨みはより募りやすい。

 

そして、自分が成人して結婚などを考えるようになってから「自分が子供を産んで障害を持つ子供が生まれたら」という問題に直面することになる。

自分が発達障害で苦しんできたのに、自分の子供がもし同じような思いをすることになったら…と考え生涯一人でいることを考えている人も、もしかしたらいるかもしれない。

 

実際のところ、答えを出すのは難しい。

 

精神障害・発達障害に関する世間の認知や支援制度はここ10年の間に変わってきて、今の30代・40代の当事者とこれから生まれてくる子供の世代では環境に違いもある。

ただ、事前によく考えてから決める問題だと思う。