精神科の新薬は高い
精神科・心療内科で処方される、「向精神薬」と呼ばれる薬は、ほとんど毎年のように新薬が開発されている。
例えばADHDの治療薬として知られている「コンサータ」も新薬の一つだが、ジェネリック医薬品が発売されていないため、高額な薬代がかかってしまう。
また、精神科に通院している人の中には、複数の薬を処方されている人もいるので、合計すると一回の通院で1万円を超えてしまう人もいる。
そこで、医療費の負担を抑えるために「自立支援医療」という制度がある。
自立支援医療とは
自立支援医療とは、心身の障害の治療にかかる医療費を軽減するための制度で、以下の人たちが対象になる。
- 精神通院医療:精神保健福祉法第5条に規定する統合失調症などの精神疾患を有する者で、通院による精神医療を継続的に要する者
- 更生医療:身体障害者福祉法に基づき身体障害者手帳の交付を受けた者で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳以上)
- 育成医療:身体に障害を有する児童で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳未満)
精神科・心療内科に通院している人は多くの場合、医師の診断書があれば比較的簡単に受給資格が得られる。
そして、この制度を利用することで得られるメリットは2つある。
- 診察代・薬代を含めた医療費の負担が1割になる。
- 月々の医療費が上限を超えると、それ以上払わなくて済む。
(1)は健康保険証をもっている人が3割の医療費を払うのに対して、自立支援医療を使えば1割で済むという意味。つまり、本来1万円の医療費がかかる人は、健康保険を使えば3000円、自立支援医療を使えば1000円ということになる。
(2)は対象者の所得に応じて、月々の支払い額に上限が設けられているということ。例えば、下の表で「低所得1」に該当する人は、月々2,500円以上の医療費は払わなくて済むことになる。
引用元:厚生労働省-自立支援医療制度の概要
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/jiritsu/gaiyo.html
自立支援医療を利用したい人は、医師に診断書を書いてもらえるか確認して、住んでいる市区町村の障害福祉課や保健福祉センターで手続きをする。
すると、約1ヵ月~1ヵ月半くらいで受給者証が発行されるので、通院のたびに窓口で渡すと割引が適用される。
自立支援医療を使って精神通院医療費が6分の1になった話
自立支援医療を使えば負担が1割になる。
つまり、健康保険証を使った場合の3分の1の負担で済む。
それに加えて、前述の自己負担上限額を利用して、月に2回通院すれば、低所得層の場合は2回目の医療費が無料、もしくはかなり少ない金額におさえられることができる。
例えば、薬代が高いことで知られているADHD治療薬のコンサータを例にとってシミュレーションしてみる。
コンサータの価格は、以下のとおり(10割負担の場合)
18mg1錠:344.1円/錠
27mg1錠:381.2円/錠
36mg1錠:410.1円/錠
ADHDで精神科に通院しているAさんの例(所得区分:低所得1)
1回目通院日:9月1日
薬の処方内容:コンサータ18mgを2錠×30日分
支払い額:コンサータ18mg(344円×2錠×30日=20640円)+診察代5000円=25,640円÷10割引きで2,564円
2回目通院日:9月29日
薬の処方内容:コンサータ18mgを2錠×30日分
支払い額:なし
※Aさんは低所得1の区分(負担上限額2,500円)なので、1回目の通院でその月の上限額を超えたため、2回目は無料になる。
上記のように、同じ月の初めと終わりに通院すれば、低所得1の層であれば2回目の医療費が無料になる可能性がある。
仮に、Aさんが健康保険のみ使用して9月と10月に一回ずつ通院した場合、7,692円(25,640×0.3)×2=15,384円負担することになる。
しかし、自立支援医療+病院に月2回通えば、2,564円の負担で済む。
つまり、15,384÷2,564=6で、6分の1にまでおさえることができる。
Aさんは低所得1の層を想定しているが、低所得2の層の人たちでも、月の負担上限額は5,000円なので、薬の処方量が多い人は2回目の費用が安くなる可能性があるだろう。
精神科の薬代を少なくする最善の方法
自立支援医療を利用することで医療費の負担を軽減させることはできる。
しかし、医療費をおさえる一番の方法は言うまでもなく、薬以外の解決策を見つけることだといえる。
確かに一部の精神疾患については継続的な投薬治療が必要だし、ADHDなどの発達障害は基本的には治ることはないが、一方で向精神薬の効果がないケースも多分にある。
例えば、抑うつや不安などの症状は、日常生活での友人関係や職場のストレス、金銭的な悩みや家族関係に影響されることがあるが、これらの根本的な問題を持ち越したまま薬だけで治すことはできない。
こういう場合は、まずは日常にある問題の解決が最優先で、その次に必要であれば薬の服用を検討すべきだと思う。
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