通信制大学のスクーリングに通ってみた【認定心理士取得へ向けて】

講義を聞く生徒たち

 

通信制大学の心理学専攻では、多くの学校で「認定心理士」という資格取得が目指せる。

そのためには、スクーリングへの出席が必要で、土日や夏期の実施時期には、全国から学生が集まる。

自分も認定心理士の資格取得や、必要な単位を履修するため、先日参加してきた。

通信制への在籍経験がない人にとっては、スクーリングはどんな雰囲気でどのようなことをするのかわかりづらいかもしれないので、今回詳しく解説する。

 

スクーリングとは?

ホワイトボードに板書する講師

通信制大学は基本的には通学せず、学校から送られてくるテキストや参考文献を読んで独学に近い形で学習する。

ただし、特定の科目に限っては、単位を修得するために学校で授業を受ける必要がある。

特に心理学のカウンセリング演習や実験実習などの科目は、一人ではできないので学校に通って教員の指導を受けながら、他の生徒と協力して進めていくことになる。

 

授業料とは別に、選択したスクーリングの受講料が掛かるが、例えば武蔵野大学通信教育部の受講料は以下のとおり。

授業形態 対象科目 受講料
講義科目 共通科目、心理学専攻科目、仏教学専攻科目など 7,500円(1単位あたり)
実験実習演習科目 「心理学実験実習2」等の実験実習演習科目 15,000円(1単位あたり)
研修科目 「念仏研修」「座禅研修」「仏跡研修」 7,500円(1単位あたり)
その他の科目 社会福祉専攻科目、教育学部の指導法に関する科目など 1,250円(1コマあたり)

 

心理学専攻学科の科目は1単位あたり7,500円とあるが、ほとんどの科目は履修する単位が2単位になっているので、7,500×2=15,000円となる。

ちなみに、放送大学の場合だと1科目あたり1単位履修できることになっていて、スクーリング受講料は5,500円。

卒業に必要なスクーリング授業の単位は20単位なので、5,500×20=110,000円かかる。

できるだけ費用を抑えて通信制に通いたい人は、各大学の授業料とスクーリングに掛かる費用を計算して決めるのが良いだろう。

また、大学によっては遠方からの受講者に大学の寮への宿泊を許可していたり、交通費に学割が適用されるので、費用の合計が大きく異なってくる。

 

スクーリングと資格取得の関係

ノートの上に置かれたメガネ

大学・大学院で取得する心理学系取得は、主に「認定心理士」「臨床心理士」「公認心理師」の3つ。

認定心理士の資格を取得するためには、①基礎、②選択、③その他、の3つの科目領域でそれぞれ必要な単位を修得しなければならない。

例えば武蔵野大学を例にとってみると、基礎科目の必要条件は以下のとおり。

①  基礎科目  a領域は4 単位以上、b,c領域の合計が8 単位以上でそのうちc領域が4 単位以上となること
a.心理学概論
b.心理学研究法
c.心理学実験・実習

基礎/選択 領域1 科 目 名 単位
基礎 a 心理学概論 4
b 心理測定法<STR/TR> 4
c 心理学実験実習1<R> 2
心理学実験実習2<SR> 2

※〈 〉内は学習方法
S:スクーリング  T:テスト  R:レポート  ST:スクーリング・テスト  SR:スクーリング・レポート

STR:スクーリング・テスト・レポート

 

表中に、c領域は4単位以上と書かれているが、つまり心理学実験実習1と2の両方の修得が必要で、心理学実験実習2はスクーリングの出席が必須となる。

 

一方、公認心理師の資格取得条件は厚生労働省のページにⅠ~Ⅴまで記載されているが、そのうちⅠの条件は以下のようになっている。

(注1)Ⅰ(1~5)については、3科目以上を履修する
大学における必要な科目名 武蔵野大学の対応科目名 対応科目の単位数 備考
公認心理師の職責 (対応科目なし)
1 心理学概論 心理学概論 4
2 臨床心理学概論 (対応科目なし) 「臨床心理学」は該当せずとする。
3 心理学研究法 (対応科目なし) 「心理測定法」は心理学統計法に対応とする。
4 心理学統計法 心理測定法 4
5 心理学実験 心理学実験実習(中級)(~2014年) 2 「心理学実験実習(初級)」「心理学実験実習1」は該当せずとする。
心理学実験実習2(2015年~) 2

 

上記のうち2と3に対応する科目は用意されていないので、3科目以上を履修するためには必然的に心理学実験実習2を履修する必要がある。

以上の理由から、認定心理士・公認心理師の資格取得を目指す場合は、心理学実験実習2のスクーリングに出席が欠かせない。

※上記以外でも、実務経験等で資格取得を目指せる方法がある。また、資格の取得条件は変更される可能性や、入学年度によっても変わるので、厚生労働省のページを要確認。

 

スクーリングに出席しなくても卒業できる?

資格取得を目指している場合、上記のように特定のスクーリングの単位が必要になるが、それ以外の場合は自宅学習だけで卒業できる大学もある。

たいてい、どこの大学もスクーリングの内容を録画したオンライン授業を提供しているので、学校に通学する代わりにオンラインで動画を視聴することで必要な単位を修得できるのだ。

このシステムを活用すれば、遠方や海外からでもネット環境さえあれば学習することができるので、学位を取得したい人にとっては有用かもしれない。

※スクーリング受講をオンライン授業に振り替える場合、スクーリングと同様に受講料がかかる。

 

通信制大学のスクーリングに通ってみた

Macbookの画面を見る生徒たち

これまで自分が受講してきたスクーリングは「心理測定法」と「心理学実験実習」。

日程は90分×4回で朝~夕方17:00くらいまでの授業が4日間ある。

実験実習では、東北や関西、中国地方など全国から50人くらいの学生が集まってきて、グループに分かれて実験をした。

タイムスケジュールはだいたい、以下のような内容。

1日目 オリエンテーション、「パーソナルスペース」の実験、「日常記憶」の実験、「GHQ心理検査」
2日目 「鏡映描写」の実験、レポートの書き方
3日目 プレゼン準備
4日目 プレゼン準備、発表

 

1日目、2日目は7~8人ごとにグループに分かれて、終日実験をする。

実験とはいっても、大学の心理学で行う実験はそんなに手の混んだものではないので、千円札の絵を描いてどれくらい実物と一致してるか集計したり、質問紙に回答するとか簡易的なものが多い。

「日常記憶」や「鏡映描写」の実験は数人で役割分担しながら交代で測定するので、こういう機会でないとデータを収集するのが難しい。

年齢層は全体的には40~50代が多い印象。20~30代、60代の学生も居た。

現役の大学生と違って普段は仕事をしている社会人や主婦の人が多いので、18~24歳くらいまでが中心の全日制とはだいぶ雰囲気も違う。

ほぼ二日間で実験して、残りの2日で準備してグループごとに結果や考察を発表するという、ややタイトなスケジュールなので、最初の二日間と次の週の二日間の間は、各自で文献を読んだり集めたりと、時間に追われていた。

それでも仕事の合間に時間を作って資料を集めたり作ったり、みんな熱心だった。

最終日の発表では、どのグループの発表も出来栄えが良くて、パワーポイントの見せ方なども上手かった。

通信制では、普段一人で勉強するのでモチベーションの低下や孤独との戦いの毎日だけれど、スクーリングでは学習意欲や目標があって勉強してる人たちが集まるので、とても刺激になる。

日本では20代前半で大学を卒業して、それ以降の年齢で学校に通うのはあまり一般的ではないが、個人的には勉強が好きであればいつでも始めれば良いし、必要であれば何歳からでも学校に通えばいいと思う。

年齢で諦めてしまう人や新しいことを始める時にためらってしまう人もいると思うけれど、スクーリングに行けばきっと、前向きに勉強し続けている人たちから良い影響が受けられるかもしれない。

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