【認知心理学】よくわかる!エビングハウスの忘却曲線と学習効率

曲線の道路

 

試験や資格テストの効率的な学習方法について書かれた書籍やサイトで、頻繁に目にする「エビングハウスの忘却曲線」。

この研究は、心理学史上初の実験的記憶研究として、世界的に有名になっている。

1885年に行われたこの研究が、130年以上経過した現在でもなお引用されているのは、エビングハウスの実験がその後の様々な記憶に関する研究に寄与しているからでもある。

しかし、この有名な忘却曲線のグラフは、説明の仕方によっては間違った解釈もされやすい。

実際にグラフが意味するところは何なのか、どんな問題点があるのか?

 

エビングハウスの忘却曲線とは

ヘルマン・エビングハウスはドイツの心理学者で、ドイツで3番目の心理実験研究所を設立し、ベルリン大学の教授にも就任した。

1885年に出版した『記憶について:実験心理学への貢献』の中には、学習と忘却のプロセスを記した「忘却曲線」の実験に関する記録が書かれている。

この実験では、「無意味綴り」と呼ばれる意味のない文字の組み合わせ(たとえば、XEG、KIB、あけう、ゆろわ…のような)を暗記して、記憶した直後から20分後にもう一度暗記する場合と、1時間後や一日後、一ヵ月後の場合だと、どれくらい記憶に保持されているかを測定している。

その結果としては、時間の経過とともに保持率が下がり、一週間から一ヵ月後にかけて緩やかになっていく。

参考:エビングハウスの忘却曲線(Ebbinghaus, 1885)

 

保持率(節約率)は20分後で58%、1時間後には44%、1日後には26%、そして一ヵ月後には21%まで下がっていく。

ここで注意しなければいけないのは、この実験は一般的な単語の暗記とは違うという点。

例えば英単語の暗記であれば、一度単語帳で暗記した単語を、今度は赤シートで隠しながら覚えているかチェックする。

しかしこの実験では、一度学習した内容を、一定時間経過したあとで再び学習して、一回目のときと比べてどの程度早く学習できるかをテストしている。

なので、厳密には覚えているかどうかではなく、どれだけ早く記憶し直せるかを確かめている。

この方法は「節約法(再学習法)」というエビングハウスが考案したもので、以下の式でどれだけ時間を節約できたかパーセンテージで表すことができる。

節約率=最初の学習に要した回数(時間)÷(最初の学習に要した回数(時間)-再学習に要した回数(時間))×100

 

例えば、初めに10回繰り返して記憶したことを、次に5回で記憶できたとすれば、10÷(10-5)×100=50で、50%節約できたことになる。

つまり、エビングハウスの実験結果を改めて言い換えると、20分後に再び記憶するのに費やす時間は1回目の28%、1時間後だと44%という意味。

なので、受験生などが連想する科目の単語暗記とは意味合いが異なる。

 

忘却曲線の問題点

指を指して疑問点を指摘する人

上記のことを踏まえた上でも、なおグラフは時間の経過が記憶にどのような影響を与えるかを知る上で参考になる。

しかし、この実験には、いくつかの疑問点が含まれている。

ひとつには、この忘却曲線の実験はエビングハウスが自分自身を唯一の被験者として行ったもので、個人差や年齢によるデータのズレがないと言い切れない。

第二に、エビングハウスはこの実験をするにあたって、記憶する事柄に意味が含まれていたり他のことと連想できてはデータに影響を及ぼすと考え、「無意味綴り」と呼ばれる全く意味のない音の羅列を記銘材料にした。

これについても、通常人が何かを記憶するときにこのような記銘材料を記憶する機会はあまりないので、日常の記憶場面にそのまま当てはめることはできない。

例えば学校の勉強なら、歴史の年号を覚えるのに語呂合わせをしたり、ストーリーを通して歴史上の人物名やその人物の業績を記憶する。

まったく知らない綴りと発音の英単語を覚えるにしても、日本語訳を覚えることでそのうち英単語から日本語訳やイメージが連想される。

なので、無意味綴りよりもはるかに早く覚えられるようになるはずだ。

 

エビングハウスによる実験が貢献したこと

文書を書く人

忘却曲線自体には批判もあるが、エビングハウスの研究はのちの記憶研究にいくつもの貢献をしている。

まず忘却曲線のグラフからは、20分後、1時間後では急速に節約率が低下しているが、一日、一週間、一ヵ月と進むにつれて緩やかになっている。

このことから、ある一定期間保持されている情報は、それ以降も保持され続けることが多いことが示された。

これは重要な情報は長期記憶へ、それ以外の情報は短期記憶へいったん貯蔵するという脳の仕組みの研究にもつながる。

また、エビングハウスは「系列位置効果」についても文書に記している。

系列位置効果とは、例えば10個の単語を順番に提示していき、1番目~10番目のどの段階で提示した単語が記憶に残りやすいかを表したもの。

この研究から、直前に提示された単語は短期記憶に残りやすいという「直前効果(リーセンシー効果)」と、最初に提示した単語は頭の中で何度も復唱し、反復学習により長期記憶に保持されるという「初頭効果(プライマシー効果)」が判明した。

他にも、集中的に続けて学習する「集中学習」と、一定時間を置いたあとで再び学習する「分散学習」の効果についての発見をするなど、エビングハウスの研究が与えた影響は大きい。