臨床心理士・公認心理師を目指そう。指定大学院入試対策と必読参考書【心理学・臨床心理学編】

臨床心理士・公認心理師指定大学院入試の対策と勉強方法の続きで、このページでは心理学・臨床心理学の入試問題の勉強方法と、おすすめ参考書について解説する。

※心理英語の学習方法については、こちらを参照。

 

基礎心理学・臨床心理学の学習方法

大学院入試は2020年の秋と2021年の春の2回受験して、受験勉強は2019年の9月頃から本格的に始めた。

通信制大学で心理学を専攻していたものの、仕事と両立しながらレポート提出や単位修得に追われていて、勉強した内容もそれほど定着していなかった。

そこで、まず志望校のウェブサイトや予備校で過去問を取り寄せることから始めた。

私立・国立の難易度が高めの学校を選んだこともあって、案の定ほとんど問題が解けなかった。

「基礎からもう一度勉強し直そう」と思い、心理学の概論書を3冊くらい取り寄せて、各用語の意味を自分の言葉で書いてまとめる練習をした。

 

上の画像が実際にまとめたノートで、内容は以下のとおり。

  1. タイトル(用語名)
  2. 用語の概要(1~2行)
  3. 関係人物名
  4. 補足情報(各1~2行)

 

1ページにつき1個の用語をまとめて、後で追記できるように余白はそのまま残しておく。

実際の試験では、一つの設問につき250~300文字程度の文章で答えるような形式が多いが、最初のうちは箇条書きで用語の説明を列挙していくやり方で良いと思う。

テキストは著者や出版社が違うものを3冊くらい用意しておけば、特定の著者の考えや言い回しに偏らずに知識を身につけることができる。

また、3冊のテキストに共通して詳しく書かれている用語は、重要な用語である可能性が高い。

それぞれのテキストの説明を読んで、要約する形でノートにまとめる。

テキストは一回読んだだけではなかなか覚えられないので、3周くらい繰り返して読んだ。

1周目では霧がかかったように曖昧だった用語も、3周繰り返すと頭にすんなりと入ってくるようになるし、記憶に定着しやすい。

 

基礎がある程度身についたら、再び過去問を解いて答え合わせする。

学校によって出題傾向が異なるので、志望校でよく出題される問題は重点的に学習する。

以下は、過去に出題された問題の例。

過去3~5回年分くらいの過去問を取り寄せると、よく出題される分野や毎年のように出題されている問題を見つけることができる。

 

Ⅶ 以下の1と2につき、それぞれで挙げた3つの錯視図形の中から1つ選んで描け。どの錯視図形を選んだかも明記すること。解答は、解答欄に記せ。(武蔵野大学, 2018年度)

1 ツェルナー錯視、ヘリング錯視、ヴント錯視
2 ポンゾ錯視、ジャストロー錯視、デルブッフ錯視

上記の武蔵野大学の場合、錯視に関する問題が頻出している。

また、心理系大学院の中では珍しく、選択問題が中心になっているのも特徴的。

 

 

問題Ⅱ
(略)…(1)から(5)のなかから3つを選び、選んだ番号を示した上で、番号ごとに10行程度でその違いを説明しなさい。(東京大学, 2019年度)(1)ライフストーリーとライフヒストリー
(2)エスノメソドロジーとエスノグラフィ
(3)構築主義と構造主義
(4)言説分析と談話分析
(5)目的的サンプリングと理論的サンプリング

東京大学の場合、統計や質的研究法に関する問題がよく出題されている。

また、単純な用語の説明だけでなく、その用語の知識があるのを前提にした上で、問題点や他との比較など、意見を述べさせるような問題が多い。

東京大学大学院のウェブサイトに教授の経歴や専門分野が載っているので、その教授が執筆しているテキストを読んで勉強するのがおすすめ。

 

テキストを一通り読んだら、あとは過去問を何周も繰り返して覚える。

分野に偏りがなく、基礎的な知識を幅広く問うような問題が出題される大学の場合は、他大学の過去問も取り寄せて解くのも良いかもしれない。

 

基礎心理学・臨床心理学のおすすめテキスト

心理学の問題は、特に私立は、認知・社会・教育・学習・発達心理学など幅広い分野から心理学の理論や歴史、人物について問うような問題が出題されやすい。

それに加えて心理統計の問題が数問出題される。

初学者の場合はまず、以下のような網羅的に心理学の基礎がまとめられているテキストがおすすめ。

 

公認心理師・臨床心理士大学院対策鉄則10&キーワード100心理学編 /講談社/河合塾KALS

 

大学院入試対策講座で知られている大手予備校・河合塾講師の著書。

予備校や入試会場でも、このテキストを持参している人をよく見かけた。

このテキストは、各ページごとに最重要なキーワードが載っていて、全部で100の用語が覚えられる。

また、キーワードに関連した用語も同時に解説しているので、一冊読めばかなり多くの用語の知識が身につく。

心理学のテキストを初めて読むと、専門用語が次々と出てきて、さらにその専門用語から派生して別の専門用語が登場したりするので、いきなり難しい概論書を読むと理解するのに時間が掛かってしまう。

その点、このテキストは初学者にもわかりやすいように表やイラスト、例え話を交えながら要約して説明しているので、短時間で効率的に覚えやすい。

ただし、入試ではさらに掘り下げた内容も出題されるので、このテキストで基本的な用語や基礎知識を身につけた上で、他の詳しいテキストも読む必要がある。

その他にこのテキストをおすすめする理由として、入試に向けた勉強の仕方や出題の傾向などの解説が載っているので、どのように勉強したら良いか迷っている人や、予備校に通わず独学で勉強する人にもきっと参考になる。

 

公認心理師・臨床心理士大学院対策鉄則10&キーワード25心理統計編 /講談社/河合塾KALS

 

前述の「公認心理師・臨床心理士大学院対策鉄則10&キーワード100」の心理統計編。

心理学編では心理統計の説明がほとんど含まれていないので、心理統計の問題に対応するにはこちらのテキストがおすすめ。

統計が苦手という人は少なくないが、このテキストは入試に特化した作りになっているので、計算式はほとんど使わず、用語の意味や図表を読み解くための知識を効率良く身につけられる。

デメリットとしては、ページ数が少なめで、このテキストに含まれていない統計手法もたくさんあるので、このテキストだけで心理統計を完全に理解するのは難しい。

ただし、入試では一部の学校を除いて統計の問題が出題される割合は少なく、複雑な計算を求められることは滅多にないので、このテキストの内容だけを優先して覚えるのも戦略としてありだと思う。

 

臨床心理士試験徹底対策テキスト&予想問題集 一発合格! ’18→’19年版 /ナツメ社/心理学専門校ファイブアカデミー

 

院試対策コースを開講している予備校のファイブアカデミーが執筆しているテキスト。

「臨床心理士対策テキスト」と書かれているが、心理学・臨床心理学の基本が学べて、院試の勉強にも使える。

河合塾の心理学のテキストよりも分厚く、より詳細に書かれていて読みやすい。

巻末には模試も2回分付いているので、繰り返しテキストを読んで問題を解けば、かなり記憶に定着する。

 

心理学 第5版/東京大学出版会

 

東京大学出版会の出版している心理学の概論書で、大学院入試対策のテキストとして人気がある。

前述の2つの予備校のテキストよりも内容が豊富で、図も多めでわかりやすい。

以前通っていた通信制大学の心理学のテキストが分量が少なめでわかりづらかったので、このテキストを初めて読んだときに、「このテキストを学校指定の教科書にしてくれればいいのに」と思ったくらい、心理学の概論書としては良書。

 

よくわかる臨床心理学 改訂新版/ミネルヴァ書房

 

これも臨床心理系の院試対策で鉄板のテキスト。

精神疾患の症状や介入、アセスメントや心理検査、心理療法の種類や研究法など、臨床心理学の分野について詳しく、しかもわかりやすく解説されている。

注意点として、現在精神疾患の名称や診断基準は米国精神医学会の「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)」に基づいて行われることが多いが、このテキストでは最新版のDSM-5ではなく、旧版のDSM-Ⅳ-TRの診断基準や分類が掲載されている。

ただし、いくつかの疾患の名称や分類方法が変わった以外では、その内容に大きな変化はないので、このテキストの内容を理解すれば院試でも大いに役立つ。

また、入試ではDSM-Ⅳ-TRからDSM-5への変更点はどこかを問うような問題が出題されることもあるので、このテキストと前述した「公認心理師・臨床心理士大学院対策鉄則10&キーワード100心理学編」や「臨床心理士試験徹底対策テキスト&予想問題集」を併せて読むことで対策ができる。

 

まとめ

ここで紹介したテキストは、心理学・臨床心理学の基礎が効率よく学べるテキストなので、特に基礎が身についていない初学者におすすめできる。

大学生の場合、卒業論文の作成で忙しい時期であり、社会人の場合は仕事等で勉強に割ける時間が少ないことを想定すると、上記のようなできるだけ短い時間で必要な知識を得られるテキストは入試に向いている。

臨床心理の指定大学院入試は、この他に英語の試験と研究計画書の提出が求められるので、時間との戦いになる。

心理学の知識を隅々まで身につけようとすると、とても時間が足りなくなるので、計画的に効率よく学習することが合格の秘訣だと思う。

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