心理学の卒業論文は大変?テーマ決めから完成まで卒論の書き方まとめ

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昨年4月から今年2月頃まで、約一年間かけてようやく通信制大学の心理学論文を完成させることができた。

大学院入試の受験勉強と併行して研究していたことや、大学が休校している最中でアンケート調査がしづらかったこと、通信制大学のため指導教員と連絡が取れる回数が限られていたことなどがあって、中盤から終盤にかけて大変だった。

心理学の卒論の進め方について、ネットで調べても見つからない情報も多々あったので、ここではできるだけ詳細に、この記事だけ読めば完成できるように述べていく。

なお、本文の詳細な書き方を知りたい人には、下記の記事がおすすめ。

 

 

 

卒論とは?

卒論とは、卒業論文の略で、卒業研究という呼び方もする。

普通、大学の最終学年次に、大学の学習の集大成として興味のあるテーマについて深く掘り下げて研究し、長文レポートにまとめることを指す。

心理学の卒論に関していえば、多くの文献を読むことで興味のある分野についての知見が深まり、統計や分析の方法、実験の手順などを実践的に学ぶことができる。

また、心理系の大学院への進学を考えている人の場合、大学院入試の面接で卒論の内容について聞かれることもある。

これは、卒論の内容を聞くことでその人の考察や分析の仕方、統計の知識がどの程度あるかを確認する意図も含まれている。

大学院では、卒論よりも長い修士論文を作成するので、卒論を書いたことがない学生や、論文の書き方や分析の仕方がわかってない学生に一から教えるより、すでに論文の書き方や知識を身につけている学生を自分の生徒にしたいという考えの教授もいるだろう。

そういう意味でも、卒論の作成には意義がある。

 

 

卒論作成のスケジュール、進め方

下図は、通信制大学で卒論を作成したときのスケジュール例。

大学ごとに時期にズレはあるが、だいたいこのような流れになると思う。

 

 

卒業研究計画書の作成・提出(前年度11月~12月)

卒論を書く前に、まずどのようなテーマで、どのような方法で調査して、どのようにまとめるか計画を立てる。

作成時期は学校によって異なるが、現役の大学生の場合、4年次には就活や大学院入試を控えているため忙しくなることが予想される。

教員側も、年度末は忙しくなるので、学校側から早めに研究の準備を始め、計画を立てるように勧められるのではないだろうか。

通っていた通信制大学の場合、この研究計画書の内容があまりにも悪く、倫理的な配慮を欠いていると事前審査に通らず、卒業研究の履修ができないという決まりがあった。

テーマや内容は後で変更することもできるが、この段階でできるだけ完成度の高い計画を立てれば、あとの研究・論文作成がとても楽になる。

逆に、計画に無理があったり実現不可能な内容だったりすると、あとでテーマを変更したり、修正を繰り返すことになるので、時間的なロスが大きくなってしまう。

 

卒業研究の開始(4月~)

卒業研究の履修登録が済んだら、4月から実際に研究が始まる。

ここでゼミに入って指導教員と打ち合わせをし、研究計画についての相談をする。

通信制大学の場合は直接教員と顔を合わせる機会がないので、月に1回のZoom面接か、メールで連絡を取り合っていた。

初回面接では、論文の作成方法や進め方の説明を受け、2回目以降からは研究計画書を見せて相談した。

このときに、問題点や修正すべき箇所の指摘を受け、テーマや内容を修正しながら論文を作成していった。

 

中間発表(8月頃)

中間発表では、指導教員と他の学部の教員複数人の前で、パワーポイントや資料を使って研究の説明をする。

流れとしては、発表時間10分のあとに、教員との質疑応答が10分程度。

この時点では、研究は未完成でも良いが、論理的に矛盾していない、整合性の取れた内容にまとめなければならない。

これまで、この中間発表で他の学生5、6人の発表を傍聴した限りでは、全員が傍聴している教員から何らかの指摘を受けて、論文の内容を修正することになっていた。

 

草稿提出(10月~11月頃)

中間発表で指摘を受けた場合、指導教員と相談して改めて内容を修正し、草稿を提出する。

草稿とは、論文の内容を要約したもので、この草稿を学校に提出して、テーマや内容を確定させる。

実験や質問紙調査を行う場合、実際に使用する質問紙や協力依頼書の様式などを併せて提出し、大学の倫理審査委員会の承認を得なければならない。

実験・調査の内容によってはこの時期では間に合わないので、もっと早くに提出することになるかもしれない。

 

清書論文提出(1月頃)

年末から年明けくらいには、実験や調査結果などをまとめて論文を清書し、指導教員に添削してもらった上で提出する。

 

口頭試問・単位修得(1月~2月)

清書論文を提出したあとで、その内容をパワーポイントにまとめて発表する。

実際に受けた口頭試問の流れは、中間発表と同じだった。

中間発表と違うのは、完成したすべての内容を、短い時間内で要約して話さなければならないので、時間配分を考え、必要に応じて事前にリハーサルする。

 

 

卒論のテーマの決め方

卒論のテーマは、自分の興味のあること、日頃から気になっていること、面白いと思えるテーマなどを選ぶ。

そして、関連のある文献・論文を検索して情報収集する。

論文をネットで検索するのには、以下のサイトが便利。

 

また、テーマは実現可能(研究可能)なものでなければならない。

例えば60歳以上の高齢者200人にアンケート調査しようと思っても、アンケートに協力してくれる人が見つからないかもしれない。

小学校進学前の幼児を対象に実験をしようと思っても、卒業研究で児童に対する実験をすることを認めていなかったり、学部生が実験をすること自体あまり推奨していない大学もある。

大学生ができる研究の範囲は限られているので、まずは初めての論文作成の練習をするつもりで、簡単なテーマ・内容の研究にしても良いかもしれない。

 

また、大学院に進学して心理学の研究を続ける場合は、卒論のテーマも進学後の研究に合わせた方が都合は良い。

その方が、大学院入試の面接時に、研究したい分野が明確に定まっていることが伝わるし、「大学院で〇〇の研究がしたいのに、どうして大学の卒論では〇〇の研究をしたのですか?」と尋ねられることも少なくなる。

 

心理学の卒論テーマの例

心理学の論文には、例えば以下のようなテーマがある。

 

  • 大学生における対人ストレスイベントと社会的スキル・対人方略の関連
  • 文章記憶に及ぼす黙読と音読の効果
  • 心理的ストレス反応尺度の開発
  • 指さし行動の発達的意義
  • 罪悪感, 羞恥心と性格特性の関係
  • 吃音者の自己像の変容プロセスの検討
  • 映画鑑賞時の感情満足とストレス反応と映画の鑑賞動機との関係の検討
  • 認知的方略が学業場面における先延ばし意識過程に及ぼす影響
  • 思春期における重要他者への再認識傾向と抑うつの関連

 

最近は発達障害関連の研究が増えてきている他、思春期・青年期をテーマにしたものも多い。

質問紙調査をする場合、指導教員の担当しているクラスの学生に回答してもらうのが手っ取り早いので、その意味でも大学生や青年期をテーマは人気があるのかもしれない。

その他、心理尺度の開発や、日常に関するカジュアルな内容の研究もある。

 

卒論のテーマが決まらないときには

特に研究したいテーマがない人は、まずは思いついた単語で論文を検索したり、過去の卒業生の論文を読むとイメージが膨らみやすい。

心理学の研究範囲は広いので、「記憶」「認知」「発達」「教育」「精神病」「学習」「意欲」「ストレス」「家族」など、調べていれば何かしら興味が湧く内容が見つかるはず。

あとは、見つかった先行研究の中から良さそうなものを選んで、その論文に足りなかった部分や問題点を補う形で、新たに研究することにすれば、テーマも設定しやすい。

 

例えば、先行研究に「青年期の孤独感と友人関係の関連」というテーマがあったとして、孤独感の高さと友人との交流の機会の多さに相関があったとする。

ただ、この研究は青年期に限ったもので、調査対象は大学生だけだったので、他の年代の場合も同じ結果になるかわからない。

なので、同じような条件で、対象者を30代~40代に変更して新たに研究する。

この場合、「成人における孤独感と友人関係の関連」のような感じでテーマも考えやすい。

 

 

心理学の研究方法

心理学の代表的な研究方法には、以下の5つがある。

  1. 面接法・・・協力者から直接話を聞き、情報収集する。
  2. 観察法・・・対象者を観察して、ある特定の場面でどんな行動や反応をするか記録する。
  3. 質問紙法・・・いわゆるアンケート調査のこと。大勢に実施し、統計を使って分析することもできる。
  4. 実験法・・・設定した条件下で協力者にどんな変化があるか見たり、条件の違う複数のグループの結果を比較する。
  5. 文献研究・・・過去の先行研究を整理して、問題点や新たな論点を提示する。

 

このうち面接法、観察法、実験法は実施するのに時間がかかるのと、協力者に日程を合わせて時間を割いてもらうなどの負担をかけることになるので実施しづらく、卒業研究では質問紙法か文献研究が選ばれやすい。

質問紙法は、用紙を作成して配布すれば、大勢の人に一斉に実施できて、統計分析もしやすいので人気がある研究法の一つ。

文献研究は、過去の文献だけで論文を書くこともできるので、協力者を集めたり、倫理審査への申請にかける時間が省ける。

卒業研究にあまり時間をかけられない場合には、文献研究が一番負担が少ないかもしれない。

 

 

卒論の構成と内容

卒業論文の構成は、以下のような順序になっている。

  1. 目次
  2. テーマ
  3. 問題・背景
  4. 研究の目的
  5. 方法
  6. 結果
  7. 考察
  8. 謝辞
  9. 引用文献
  10. 付録(質問紙など)

 

本文の文字数は各学校で指定があるが、通っていた大学では2万字以上と指定されていた。

ただし、指導教員からはもっと少なくても良いと言われたので、実際に完成させた論文は1万6千字くらいだった。

 

※本文の具体的な書き方については、以下の記事を参照

 

 

 

卒論のアンケート調査(質問紙調査)の方法

質問紙調査は、既存の質問紙を使用するか、自分で一から質問紙を作成するという2パターンがある。

また、用紙に思っていることを自由に書いてもらい、その記述内容を考察したり仮説を導きだしたりする方法と、質問項目に対して「はい」「いいえ」「どちらでもない」のような選択肢に〇をつけてもらう方法がある。

後者の場合、心理尺度と呼ばれる、性格や気分、感情、動機づけ、対人関係などの人の心理を測定するための質問紙(尺度)がすでにたくさん作成されている。

例えば下記のサイトでは、先行研究で検証を重ねられてきた、信頼性の高い心理尺度のリストが掲載されている。

『心理測定尺度集Ⅰ~Ⅵ』所収尺度まとめ【完全版】

 

この心理尺度を使えば、不安に関する尺度を使用して、「男女の不安の高さの違い」、「青年期と成人以降の不安の高さの違い」のような比較をしたり、複数の尺度を使用して、「抑うつの高さと不安の高さの関連」、「対人関係と孤独感の高さの関連」のような比較をすることもできる。

 

もしこの心理尺度を自分で新たに作成する場合、先行研究をもとに適切な質問項目を選定したり、予備調査を実施して質問項目が妥当かどうか検討したりなど、いくつかのステップを踏まないといけないので、既存の尺度を使うよりも作業が大変になってくる。

 

 

 

 

卒論のやる気がでないときの対処法

卒論の文字数は短くても1万字以上、あるいは2万字以上という、普段のレポートよりもずっと長い文章を書くことになる。

3日で終わらせたという記事を見かけることがあるが、しっかりと作り込んだ論文に仕上げるには、文献をたくさん読んで、場合によっては実験や調査もするので、ある程度の時間がかかる。

先行研究を読んでいるうちに、今の研究のやり方ではまずいことに気がついたり、論理展開がうまくいかなくて悩まされることもある。

母校の卒論の中間発表では、複数の教員から次々と指摘を受けて、ほとんどの学生が2月の口頭試問までに内容の修正、テーマの変更をしていた。

実験やアンケートを計画していても、十分な人数の協力者を集められず、正確なデータが得られないこともある。

大学院入試や就職活動や仕事で忙しい最中に卒論が思うように進まないと、やる気が出なくなったり投げ出したくなったり、卒論うつのような状態に陥ったりもする。

 

ストレスをため込まないために、まずは事前策として、研究計画をきちんと立てるようにしたい。

先行研究を十分に読んで、論理的に矛盾がないようにすれば、修正する必要性も低くなる。

また、内容はシンプルな方が書く側も読む側も混乱しなくなる。

 

論文の作成開始後は、集中力が続かなかったら他のことをしたり、その日は早めに寝て、次の日起きてから、脳がリフレッシュされた状態で続きを進める。

 

あとは、指導教員との関係も大事になってくる。

気軽に相談や質問ができるような関係性が築ければ、論文が行き詰った時に提案してもらえたり、早い段階で間違いを指摘してもらい、修正することもできる。

通信制大学やオンライン授業を取り入れている大学では、教員と直接会って話せる機会が少ないので、気になったことがあればメールや電話でも良いので、遠慮せずに積極的に連絡した方が良い。

その方が教員にとっても、締め切りが近づいて切羽詰まった状態で相談されるより、きっと楽だし安心できるだろう。