発達障害グレーゾーンでもほぼ確実に障害者手帳が取得できる話

発達障害グレーゾーンでもほぼ確実に障害者手帳が取得できる話

結論から話すと、発達障害の診断が下りず、グレーゾーンと言われた経験がある人でも、最終的に障害者手帳を取得することはできる。

その方法は、発達障害と診断してくれる精神科医が見つかるまでクリニックをはしごして回り、発達障害と診断されたら、そのクリニックで診断書を書いてもらい、精神の手帳の申請をすれば良い。

診察を受ける際には、発達障害者の典型的な症状や行動を話せば、5件、10件とはしごしているうちに、発達障害と診断する医師にいつか当たる。

あとは、診断書の内容次第で手帳が交付される。

 

世間のイメージとは裏腹に、精神障害とは、このようにあっさりと決まってしまう側面を持っている。

以上がグレーゾーンの人の手帳取得方法だが、もちろんこれには色々な問題も含まれているので、順を追って説明していく。

 

 

発達障害グレーゾーンの大人が増えた背景

そもそも「グレーゾーン」とは何か?

正式な診断名ではなく、発達障害っぽい症状を自覚している人が自称したり、発達障害と診断するほどではないが、その傾向がある人に対して医師が伝える際に使う用語らしい。

正式には発達障害に該当しないとはいえ、当人たちからしてみれば深刻な悩みで、診断名が付かないので支援を受けることもできないという状態に陥っている。

 

こうして、グレーゾーンの人たちが増えてきたのは、社会的な要求水準が上がってきたことも一因だと思われる。

厚生労働省の調査によると、医師から発達障害と診断された者の数は平成23年で31万8千人だったのに対して、平成28年には48万1千人にまで増えている。

 

 

上の表は、発達障害者を含めた精神障害者手帳の所持者数の推移だが、こちらも平成23年の56万8千人に対して、平成28年には84万1千人にまで増えている。

年齢別に見ると、20代の増加率が前回比224.2%で一番高い。

引用元:
厚生労働省-生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/seikatsu_chousa_list.html

 

発達障害単体のデータではないとはいえ、これは20代に就職して、マルチタスクに仕事をこなす能力や、職場で要求されるコミュニケーションスキルについていけず、その原因を発達障害と考えた人たちが診断を受けて手帳を取得したためだと推測できる。

発達障害者の診断を受ける人が増えたということは、当然診断に至らなかった人の割合も増えるといった具合に、発達障害グレーゾーンの大人が増えたのだと思われる。

 

 

発達障害とグレーゾーンはどのように診断されるか

日本では、診断名をつけることができるのは精神科医に限られており、アメリカ精神医学会(APA)の精神疾患の分類と診断の手引(DSM-5)、もしくは世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-11)の診断基準をもとに診断している。

例えば、発達障害の一つである自閉症スペクトラムの場合は、下記などの条件が満たされたときに診断される。

 

  1. 複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的欠陥があること
  2. 行動、興味、または活動の限定された反復的な様式が2つ以上あること(情動的、反復的な身体の運動や会話、固執やこだわり、極めて限定され執着する興味、感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ など)
  3. 発達早期から1,2の症状が存在していること
  4. 発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること
  5. これらの障害が、知的能力障害(知的障害)や全般性発達遅延ではうまく説明されないこと

引用元:
e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-005.html

 

この診断基準の問題点としては、上記の項目にどの程度当てはまっていれば障害としてみなすかの、線引きがはっきりと定まっていない点にあると思う。

例えば、(1)社会的コミュニケーションの持続的欠陥、(4)対人関係や学業的・職業的な機能が障害されている…などの文言では、どの程度の範囲を「欠陥」や「障害」とするのかが、あいまいなままになっている。

結局のところ、それを判断するのは精神科医なので、主観が入りやすい。

それに加えて、医師は患者の話をもとに診断基準と照らし合わせて判断するので、患者の主観的な自覚症状にも影響されやすい。

裏を返すと、上記の診断基準を患者があらかじめ調べて、そのまま医師に伝えればあっさりと診断がついてしまう可能性もある。

そういう意味で、健常者と発達障害者とグレーゾーンを正確に区別することはできないといえる。

発達障害と診断されても実は誤診の可能性もあるし、グレーゾーンと言われても実は発達障害の可能性もある。

なので冒頭に述べたように、いくつも病院をはしごすれば、そのうち発達障害と診断する医師に出会う確率も高くなっていく。

 

※もちろんすべての医師が短絡的に診断を下すわけではなく、長い間の診察や知能検査の結果を考慮して決める医師もいる。

 

 

発達障害グレーゾーンと就職・就労支援

支援を受けるのに、障害者手帳は必須ではない。

最近では、手帳がなくても採用している就労継続支援事業所や、診断がない人でも受け入れている就労移行支援施設もある。

例えば、株式会社kaienでは、発達障害・グレーゾーン特化の就労移行支援をおこなっていて、ウェブページには、発達障害の診断がなくても、「障害福祉サービス受給者証が取得できれば可能」と記載されている(引用元)。

 

一方で、発達障害者への支援の歴史はそこまで長くない上に、どちらかというと児童や学生向けのものに偏っているので、大人になって手帳を取得しても、必ずしも期待するような支援は受けられないかもしれない。

クリニックを何件も回って診断名を付けてもらう労力や費用のことを考えると、まずは手帳がなくてもできることを検討してみるのが良いと思う。

 

 

発達障害グレーゾーンの相談先

グレーゾーンの大人の相談先として考えられる場所を列挙した。

 

  • 精神科・心療内科・・・発達障害の診断・検査が受けられる
  • 就労移行支援事業所・・・就労に向けた訓練を受けられる
  • 大学の相談室・・・就職や学校生活での相談ができる
  • 発達障害の自助グループ・・・当事者と悩みを共有したり情報交換ができる
  • 住んでいる自治体の保健福祉センター、障害福祉課・・・福祉サービスの相談
  • カウンセリングルーム・・・心理療法を受けたり悩みの相談ができる

 

発達障害の自助グループは年々増えていて、当事者だけでなく家族や、診断を受けていないグレーゾーンの人でも参加できる団体もある。

悩みを持つ当事者同士の団体なので、支援機関ではないが、病院や支援機関では得られないような情報や交友関係が得られるかもしれない。

 

 

まとめと今後の期待

最後にもう一度、発達障害の診断について補足しておく。

発達障害を含めて、精神疾患の診断には誤診が少なくない。

 

それを証明する実験として、1973年のローゼンハン実験というものがある。

この実験では、精神障害を装って幻聴を訴えた複数の疑似患者が、統合失調症と診断されて精神病院に入院した。

一方で、疑似患者でない本物の入院患者が、疑似患者として疑いをかけられるという結果になった。

このことから、「精神科医が、正常な人と精神障害を持つ人を見分けられない」と結論づけられた。

 

これは2021年の現代でも同じことがいえるので、障害がある人がグレーゾーンと診断されたり、障害がないのに発達障害と診断がつくこともあり得る。

これでは、本来支援が必要な人がその支援を受けられなかったり、逆に本人と医師の思いこみで発達障害のレッテルを貼られてしまうケースも出てきかねない。

なので、今できることとして、精神科医は知能検査や心理検査のデータや、普段の生活状況などを踏まえて、診察を重ねて総合的に判断して誤診を減らすべきだと思う。

できれば、将来的には脳の機能を検査するような客観的な方法で、正確に判断できるようになることを期待している。