場面緘黙症の経験者が大人になって悩む後遺症と9つの改善方法

選択性緘黙の影響

場面緘黙症とは、他の状況(家庭など)では話すことが出来るのに、特定の社会的状況(学校など)では話すことができなくなる疾患をいう。

その症状がもっとも現れやすいのは、小学校就学前から小・中学生くらいの時期なため、成人以降についての研究はあまりおこなわれていない。

そこで本記事では、場面緘黙経験者の成人以降の後遺症について考察してみた。

 

場面緘黙症は大人になったら治る?

場面緘黙症の発症率は0.2%~0.5%で、幼稚園や小学校入学をきっかけに明らかになることが多いという。

学校や人前で一言も話せなかったり、体が固まって動けなくなる「緘動」を伴うこともある。

しかし、場面緘黙は人見知りと混同されやすいこと、環境の変化をきっかけに改善する人もいることなどから、「時間が経てば自然に治る」と考えている保護者や医師も少なくないようだ。

そのため、成人を対象にした場面緘黙症の研究は児童に比べて少なく、見過ごされてがちになっている。

そこで、成人以降の経験者の状況について、論文やSNSを検索してみた。

 

yahoo知恵袋やツイッターで「場面緘黙症 後遺症」で検索すると、成人以降も後遺症や二次障害のために、社会適応に困難を抱えている人たちの様子がうかがえる。

また、下記の論文・研究記録などでも経験者の後遺症について触れられているので、参考になるだろう。

 

場面緘黙当事者・経験者から見た「場面緘黙」―「大人のかんもくフォーラム」シンポジウムの記録から-
https://nagano.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=1228&item_no=1&page_id=13&block_id=17

場面緘黙経験者の適応・不適応過程についての研究
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjep/69/2/69_99/_pdf

 

 

大人になってから悩む場面緘黙症の後遺症

では、場面緘黙症の経験者は、大人になってからどのような後遺症をもつのだろうか?
個人的な経験や経験者から聞いた話、体験記などを総合して、列挙してみる。

 

  • 話すタイミングがわからない
  • 考えすぎてしまい、話すまでに時間がかかる
  • 会話が続かず、うまく雑談ができない
  • 三人以上になると話に入れなくなる
  • とっさに言葉が浮かばない
  • 自分から人に話しかけられない
  • 怒られたり理不尽なことを言われたときに反論しづらい
  • 電話応対が苦手
  • 人に助けを求めることができない
  • 人との接し方がわからず、友だちができない
  • 表情が固く、動作がぎこちない
  • 感情表現やボディランゲージが苦手
  • 初めての場所や初対面の人との会話に緊張や不安を感じる
  • 人の視線や反応が気になる
  • 人付き合いの経験が少ないので、常識的なことでも知らないことがある
  • 声が小さいと言われる、聞き返される
  • 人と接するのにストレスを感じやすい、エネルギーを費やしてしまう
  • 自己肯定感が低く、自信がもてない
  • 孤独、不安、抑うつなどの気分になりやすい
  • 自分から積極的に動けない、受け身になりやすい

 

 

場面緘黙症の大人が後遺症の克服に向けてできること10選

ここからは、後遺症の克服に役立ちそうなこと、個人的に変化のあったことなどを紹介する。
科学的な根拠や裏づけはないが、試してみる価値はあるかもしれない。

話す練習ができる環境に行く

場面緘黙を長い間経験してきた人が、いきなり話そうとしてもうまくいかないことがある。
周りの会話のスピードや話の内容についていけなかったり、考えているうちに別の話題に移ってしまうからである。

そこで、まずは自分と同じように話すことに苦手意識をもつ人たちが集まる場所で練習することで、いわゆるスモールステップを踏むことができる。

これまで参加した場所の例を挙げると、話下手な人が集まるネットのオフ会、場面緘黙症の自助グループ、引きこもりや社交不安などの悩みを抱える青少年の居場所などは、学校や職場に比べて話すハードルが低かったので、参加がしやすかった。

 

発話能力を向上させる

長い間言葉を発していないと、声帯や表情筋が衰えたり、発声するときの舌の位置や呼吸の乗せ方がわからなくなってしまう。

そこで、ボイストレーニングの教室に通って矯正するという手段がある。

ボイトレの教室には、「話し方の矯正コース」というのがあって、滑舌が悪い、声が通らない、聞き返されるといった悩みをもつ人に向けたコースがあり、教室で教わりながら自宅で復習すれば、舌や顔の筋肉も鍛えられて、発声の改善につながる。

教室に通うのに抵抗があるという人や、お金がないという人の場合、書店や図書館でボイトレの本を読みながら自分で実践することもできる。

ただし、できればプロの人に見てもらいながら練習した方が、自分で気づかない間違いを指摘してもらえるので上達も早い。

 

事前に会話の準備をする

面接や発表では、話す内容がある程度決まっているので、事前に自分で答えを用意しておき、リハーサルすることで、本番で話すときの抵抗が少なくなる。

また、何度か会ったことのある相手の場合でも、その人の趣味や好みの傾向はある程度把握できるので、事前にシミュレーションしておくことができる。

 

うまく会話することにこだわりすぎない

近年、会話能力に悩む人が増えた背景には、ここ10年から15年くらいの間で、社会全体で急激にコミュニケーション能力が重視されるようになったことと関連しているのではないかと思う。

また、一部ではコミュニケーション能力=長く話すことや面白い話をする雑談力のように捉えられている風潮もあるが、雑談とは娯楽の要素が多く、コミュニケーションと同じではない。

短い言葉で簡潔に答えられた方が良い場合もあるし、雑談ができないと仕事にどれほどの支障があるのかという疑問もある。

時代や地域によっては、むしろ冗長に話すことは好まれなかった。

会話には、喋るのが得意・不得意、外向的・内向的などの気質的な要因も関係しているので、うまく話すことにばかり気を取られない方が、精神的な安定が得られるかもしれない。

 

筋弛緩法やヨガで体の緊張を和らげる

不安や緊張が強い人の場合、無意識に体に力が入ってしまい、筋肉がこわばってしまう。

また、体のこわばりから姿勢の悪さや体の歪みなども生じてしまう。

筋緊張や体の歪みはストレスが生じさせやすく、正しい発声ができなくなることにも関係してくるので、筋弛緩法やヨガのトレーニングをすることで改善が期待できるだろう。

体をリラックスさせる方法やヨガのやり方などは、Youtubeに動画がたくさん上がっているので、自宅で無料で実践することもできる。

 

得意なこと、成功体験を増やす

場面緘黙症の経験者は、発達の初期から対人関係につまずくことで、自尊感情や自信を低下させてしまいやすい。

自己に対する肯定感や自信が低いと、不安や緊張、意欲の低下などにもつながる。

そこで、新しいことを覚えたり得意なことを増やしていくことで、自信の回復や自己効力感を持たせることができる。

例えば、楽器を練習して上達させたり、専門分野の本をたくさん読んで知識を身につけたり、絵を描いたりスポーツをしたり、自分が好きで継続できることをするのがおすすめ。

 

場数を踏んで苦手な場面に慣れる

これは人によるかもしれないが、苦手なことでも繰り返すことで慣れることもある。

例えば面接の練習を何度もすれば、本番での緊張は軽減される。

職場で電話応対がうまくできなくても、毎日何十本も電話応対を繰り返していると、定型文のような受け答えが身についてくるし、意識せずに喋れるようになる。

ただし、自分でやってみて「これは絶対に無理だ、何度やってもうまくいかない」と感じた場合には、無理せず早めに見切りをつけて辞めるのも大事。

苦手なことを何度繰り返してもできないままだと、逆に自信の喪失につながってしまうし、時間の損失も大きい。

 

苦手なことはせず、負担が少ない環境を選択する

前述したこととは逆に、自分にとって過ごしやすく、苦手な部分が表れにくい学校や仕事を選択するという方法もある。

人には向き不向きがあり、できることとできないことがあるので、工夫したりずっと続けてもできる見込みがないと思うのであれば、考えを切り替えて、自分ができることや得意なことを増やしていった方が得られるものは多いかもしれない。

それはスポーツが苦手だけど絵の才能がある人が画家を目指したり、球技は苦手だけど走るのが好きな人が陸上の選手を目指すようなものだと思う。

具体的には、通信制の高校や大学に在籍したり、在宅でできる仕事をすることで、対人関係上の問題やストレスを軽減できる可能性がある。

 

緘黙経験をポジティブにとらえる

場面緘黙症の経験者の大半は、おそらく嫌なことも色々と経験してきたと思う。

大人になってからも後遺症のために思うようにいかないと、ネガティブな気分になり、過去の嫌な出来事を思い出して、さらにネガティブな気分が生じるという悪循環に陥りやすい。

これは、心理学用語の「気分状態依存効果」「気分一致効果」などで説明されていて、ネガティブな気分のときには、ネガティブな記憶が想起されやすくなるといわれている。

ネガティブな自己像しかもてないと、意欲やパフォーマンスの低下にもつながる。

そこで、過去の経験からポジティブな側面を見つけることで、負の連鎖から抜け出すという方法もある。

例えば、緘黙だったことで、わずらわしい人間関係をもたなくて済んだということもあり得るし、一人で過ごした時間を利用して読書や絵を描いていた人の中には、得られた知識やスキルを仕事に活かせている人もいる。

取り立てて得意なことがないという人でも、やや極端な例を挙げれば、もし場面緘黙でなければ友人と毎日外出して、外出先で事件や事故に巻き込まれて死亡していたかもしれない。

「もしも場面緘黙症でなかったら」のように、人がもしもの話をするときには、たいてい今の自分よりも良い理想的な自分を思い浮かべるが、実際に今より良い人生になっていたという保証はどこにもない。

 

 

まとめ

ここまで、場面緘黙症は大人になってからも後遺症や二次障害を生じさせることと、後遺症の対策について考えてみた。

この症状は小・中・高校と期間が長引くほど、後遺症の改善や社会適応に時間がかかり、難しくなっていくのを感じる。

改善方法として緘黙の経験をポジティブに捉えるという案も出したが、それでも結局のところ、できるだけ早い段階に発見・治療することが将来への負担を少なくする一番の近道に違いない。

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