発達障害で障害者手帳を取得する方法を解説する【詳しい体験談付き!】

障害者手帳

 

発達障害児・者を取り上げるテレビ番組が増えてきたことで、最近では「発達障害」という名称がそれほど珍しいものではなくなってきた。

自分が初めて精神科で検査を受けた当時、発達障害かもしれないと他人に話すと、「歩けるの?!すごいね」なんて言われることすらあったのを考えると、だいぶ世間への認知が進んできたのを感じる。

医療機関で発達障害の診断を受けると、次に「障害者手帳」を取得するかどうかという問題がでてくる。

診断を受けても手帳がないと、特別な配慮を受けられなかったり障害者枠での就職ができないので、手帳の取得を考える人は少なくないだろう。

手帳には種類があり、申請方法も異なるので、自分の体験談も交えてできるだけ詳しく説明する。

 

発達障害で障害者手帳を取得する方法

発達障害で取得できる手帳には、「療育手帳」と「精神障害者保健福祉手帳」の2つがある。

その二つの特徴は以下のとおり。

 

療育手帳(愛の手帳)精神障害者保健福祉手帳
対象主に知的障害者うつ病・躁うつ・統合失調症等
申請の流れ①役所の障害福祉課へ申請
②児童相談所・知的障害者更生相談所等で判定を受ける
③結果の通知が送られてくる
①病院へ半年以上通院する
②医師に診断書を書いてもらう
③役所の障がい福祉課へ申請
④結果の通知が送られてくる
等級区分A、B1、B21級、2級、3級
受けられるサービスJR乗車券の割引
民営バス・航空旅客運賃の割引
所得税・住民税の控除
就労移行支援・継続支援の利用
障害者枠での就労する際の法定雇用率への算定
グループホームへの入居支援 他
民営バス・航空旅客運賃の割引
所得税・住民税の控除
就労移行支援・継続支援の利用
障害者枠での就労する際の法定雇用率への算定
グループホームへの入居支援 他
有効期限おおむね2~5年(地域により異なる)2年

 

おおむね上の表のように分けられるが、地方自治体によって障害の判定基準や受けられるサービス内容、有効期限は異なる。

例えば東京都の場合、「心身障害者福祉センター」で判定を行い、有効期限は存在しない。

ただし、3、6、12歳または18歳に達した場合は更新の判定を受けることになる。

精神保健福祉手帳所持者は、東京都の場合は都営地下鉄・バスが無料になる乗車証が発行され、横浜市も市営地下鉄・バスが無料の乗車券が発行される。

基本的に、精神保健福祉手帳で受けられるサービスはたいていの場合、療育手帳や身体障害者手帳でも同様のサービスが受けられる。

なお、療育手帳・精神保健福祉手帳ともに、本来は発達障害を対象にした手帳ではないが、発達障害者手帳が存在しない現状ではどちらかを選択することになるだろう。

手帳の取りやすさでいえば、精神保健福祉手帳の方が断然取得しやすい。

 

療育手帳の申請をしたときの体験談

公共施設

もう10年くらい前の話だけど、当時「授業中落ち着いて座っていられず騒ぐ子ども」の存在が問題になり始めていた。

発達障害の一種である注意欠陥・多動性障害(ADHD)の子どものことで、それとは別にコミュニケーションの障害であるアスペルガー症候群がテレビで取り上げることもあった。

今ほど情報は充実しておらず、診断できる医師もほとんどいない状態だったけれど、当時学校生活や就職に問題を抱えていた自分は、検査だけでも受けてみようと思い精神科を受診してIQの検査も受けた。

結果、全IQ平均で知的ボーダー域の数値が出て、発達障害というより精神遅滞(知的障害)の領域に入った。

今思うと、その当時は進路や将来に悩んでいて、精神状態が最悪だったのが影響したのかもしれないけれど、医師からも「検査はその時の心身の状態が影響する」と言われた。

 

ともあれ、一般枠で仕事をしていく自信がなかったので、療育手帳を取得して障害者枠で就職活動していこうと思った。

療育手帳の申請は手が混んでいて、まず親と一緒に役所の窓口で申請して、管轄区域の判定機関の予約を取る。

予約を取ってから判定を受けるまでに数ヶ月かかり、判定を受ける時も親が同伴で別室に呼ばれ、自分が小学校だった頃や就学前の状況を事細かに聞かれた。

親への問診の間、自分はまたIQ検査を受けさせられ、相談員から問診された。

 

今では発達障害の診断を受けて療育手帳の申請をする人もいるだろうけど、その頃は発達障害という概念もほとんど存在しておらず、療育手帳を取得したければ知的障害として申請するしかなかった。

なので、役所の窓口では「療育手帳を取る人はこんなに字をきれいに書けるはずはない」といわれたり、判定機関の相談員からは「あなたは本当に自分に障害があると思ってるの?」と責められたりしたが、IQ検査の結果は判定機関で受けたときも低かった。

最終的には、市区町村から雇われた精神科医が問診をして、「通知表の成績が良すぎる」という理由で却下された。

学校生活は小学校から高校卒業まで毎日惨めで苦痛な思いしかなかったけれど、ほとんど一日も休まずに通い続けた。

だが、障害の申請のときには「障害者はいじめられて不登校になる割合が多いのに通い続けられたのか?」と問い詰められ、「通知表の成績に3や4がこんなに多いのはおかしい」と言われて却下されたことで、「今までの努力が報われるどころか裏目に出るとは・・・」と馬鹿馬鹿しい気持ちになった。

 

因みに、このとき医師の書いた「診療情報提供書」も参考として提出したけれど、その医師によって書かれた文書には抑うつ傾向があることが書かれていて、「そのせいでIQの数値が低く出たのだろう」と結論付けられてしまった。

今になってみるとあながち間違っていない部分もあるけれど、療育手帳を取得して就職する以外道がなかった当時では、申請が通らなくて落胆した。

障害者と判定されることが心底嬉しいわけでもないが、診断名がつくことでようやくこれまで「努力不足」と否定されてきた自分に対して、「障害が原因だから仕方ない」という解放された気持ちになれるし、あらかじめ障害者枠で就職することでプレッシャーから解放される部分もある。

 

結局、手帳は交付されなかったけれど就職して、環境も変わって生活は安定してきた。

あとになって、市区町村によって判定基準が違うことや、真偽は定かじゃないけれど市区町村の財政状況なども判定のされやすさに影響されるという話を聞いた。

療育手帳の基準だとIQ70以下は知的障害で75程度ならボーダー、80以上は一般という区分けがされているが、地域によって70以下でないと対象外だったり、75以上の発達障害でも交付されたりと平等ではない。

手帳を申請した街は財政状況も悪化していたし、判定機関に雇われた精神科医の評判も良くなかった。

なので、就職後の転居先でもう一度判定を受けることにしたが、そこでも結局「判定の基準を大きく超えている」ということで通らず、療育手帳の申請はそこで諦めることにした。

 

精神障害者保健福祉手帳の申請をしたときの体験談

市役所

療育手帳の判定が不適格となったときに、判定機関から「精神の手帳を申請してみてはどうか」と言われたが、その当時は療育手帳の申請しか考えていなかった。

当時は発達障害の存在が世間にほとんど知られておらず、手帳を使って就職活動をする際も療育手帳を取って知的障害のイメージを持たれるか、精神保健福祉手帳を取得してうつ病や統合失調症のイメージを持たれるかのどちらかになるので、療育手帳を取得した方が配慮が受けやすいと思った。

実際には、障害者手帳と一括りにしても色々な特性を持っている人がいるし、同じ病名でも一人ひとり異なった症状を持っているものだけれど、事業主や世間は「療育手帳」「精神障害」という言葉に特定のイメージを持ってしまう。

今でこそテレビでうつ病や発達障害を題材にした特集が組まれていることで、世間一般に障害が認知されてきたけれど、10年、20年前はもっと差別や偏見が強かった。

自分自身、市内で知られた山奥にある精神病院の話を初めて聞いたとき、「一生治ることのない幻覚や妄想に苦しむ患者たちが隔離されている恐ろしい場所」のようなイメージを子ども心に抱いていた。

ところが、最初の会社を離職して再就職活動をしていた頃、再び手帳の必要性を感じたので、支援機関の勧めもあり、申請することにした。

精神の手帳は療育手帳ほど手続きは煩雑でなく、医師に診断書を書いてもらって役所で書類を書いて提出するだけ。

判定は管轄の精神保健福祉センターが行うが、来所の必要はなく、診断書の内容が重視される。

手帳の判定基準として精神疾患の状態に左右されるので、発達障害単体では判定されにくい。

申請からだいたい2ヶ月くらいで通知が来るので、結果が出るまでの期間はそこまで長くない。

療育手帳に比べて交付されやすいのは、療育手帳や身体障害者手帳の場合、一度判定されれば基本的に障害は治ることはないので更新も通りやすく、手帳で受けられるサービスの種類が多いことなども影響していると考えられる。

精神の手帳を所持していて、偏見を持たれることもあるかもしれないが、最近では発達障害で手帳を取得する人が増えてきており、精神障害者全体の数も急増しているため、以前よりはマシになってきたと思う。

また、障害者雇用において、身体障害と知的障害に加えて最近、精神障害者も法定雇用率に算定されることになったので、障害者枠での就労を考えている場合、手帳を取得する意義はある。

 

まとめ

外の景色を眺める人

発達障害者で手帳を取得する際の二つの手帳の特徴をおさらいすると、療育手帳の方が受けられるサービスが多いが判定基準が厳しく時間もかかり、保護者の同伴や母子手帳、通知表、診療情報提供書など用意しなければならない書類も多い。

一方、精神保健福祉手帳は医師の診断書があれば自分一人で役所の窓口に提出するだけで、手間がかからない。

また、障害者の中には療育手帳と精神保健福祉手帳の両方を所持している人もいる。

 

手帳を使った就職活動の際の注意点としては、企業によって障害に対する理解度が違うので、書類送付の際に手帳のコピーだけを送付すると、その手帳の種別を通じて間違ったイメージで本人のことを見られてしまう可能性はある。

書類と一緒に自分の障害特性や必要な配慮を示した用紙を添付した方が良いかもしれない。

 

最後に、手帳は取得することが必須ではない。

仮に発達障害の診断を受けたとしても、自分の持っているスキルや長所を生かして会社に順応したり自営業で収入を得ている人もいる。

また、手帳を取得したからといって必ずしも学校の教員や会社の事業主から配慮してもらえることが約束されているわけではない。

もし手帳がなくても問題なく生活できるのであれば、無理に申請する必要もないだろう。